情報提供 TKC税務研究所
税法話題の判例紹介 ◆ 平成29年4月・通巻第212号
固定資産課税台帳の登録価格が登録時の不動産の価額を表しておらず、その時価を上回っているとして、登録免許税に係る処分の一部を取り消した事例

【文献番号】 26012639
【文献種別】 裁決/国税不服審判所
【裁決年月日】 平成24年12月5日
【裁決事項】
1. 登録免許税法10条1項に規定する不動産の価額。
(要旨文献番号:66015333)
2. 登録免許税法附則7条の規定の趣旨。
(要旨文献番号:66015334)
3. 登録免許税法10条1項に規定する不動産の価額と同法附則7条に規定する台帳価格との関係。
(要旨文献番号:66015335)
4. 登記の時における土地の台帳価格が時価を上回っているとして、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分の一部が取り消された事例。
(要旨文献番号:66015336)
【裁決結果】 一部取消
【掲載文献】 裁決事例集89集457頁
【参照法令】 登録免許税法10条、附則7条



《本裁決の解説》
1. 事案の概要
(1)  審査請求人(請求人)は、請求人が平成15年8月28日に取得したa市e町○−○の本件請求人所有地(地目は宅地、地積は162.84u)に隣接するa市e町○−○の本件土地(地目は宅地、地積は190.64u)を、平成22年12月21日、Jから取得した。
(2)  請求人は、平成22年12月21日に原処分庁に対して、本件土地について、原因を同日売買、登録免許税の課税標準の額を●円及び登録免許税の額を●円と記載した登記申請書に、当該税額●円に相当する金額の収入印紙を貼付して提出し、所有権移転登記を受けた(本件登記)。
 当該申請書には、平成22年12月14日付でa市長が作成した本件土地の固定資産価格通知書が添付されており、当該通知書によれば、平成22年度の固定資産課税台帳に登録された価格(台帳価格)は●円である。
(3)  a市長は、本件土地の平成23年度の台帳価格を8,930,340円と決定した。
(4)  請求人が、上記決定に対し、平成23年5月30日、a市固定資産評価審査委員会(a市評価審査委員会)に本件土地の平成23年度の台帳価格について審査の申出をしたところ、a市評価審査委員会は、当該申出に対して、同年7月27日付で平成23年度の台帳価格を●円と決定した。
(5)  請求人は、平成23年10月26日付で原処分庁に対し、登録免許税法31条2項の規定に基づき、上記のa市評価審査委員会の決定書を添付し、本件登記の申請に係る課税標準の額及び登録免許税の額の正当額は●円及び●円、過誤納額は●円であるとして還付通知請求書を提出したところ、原処分庁は、同年11月18日付で、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(本件通知処分)をした。
(6)   請求人は、本件土地については、平成22年度と平成23年度において、地目の変更や土地の形状の変化がないから、本来、平成22年度の台帳価格はa市評価審査委員会の決定した平成23年度の台帳価格と同額となるべきであり、したがって、本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額は●円であるとして、本件通知処分の全部取消を求めて、審査請求をした。
2. 本裁決の要旨
(1)  認定事実
 本件土地の売買の経緯
  JはK社に本件土地を早期に売却したいと依頼し、売却価格もK社に一任していた。
  請求人は、本件土地に隣接する本件請求人所有地を所有していたことから、K社から本件土地の売買について打診を受け、平成22年12月21日、Jと売買価格を100万円、媒介者をK社とする本件土地の売買契約を締結した。
 本件土地の台帳価格の決定の経緯
(ア)平成22年度の台帳価格
  a市長は、本件請求人所有地の前面道路に付された平成22年度の固定資産税の路線価●円に本件土地の地積を乗じて、本件土地の平成22年度の台帳価格を●円と決定した。
(イ)平成23年度の台帳価格
  a市長は、本件土地と本件請求人所有地を併せ二筆一画地として評価し、本件土地の平成23年度の台帳価格を8,930,340円と決定した。
 a市評価審査委員会による本件土地の平成23年度の台帳価格の決定の経緯
  a市評価審査委員会は、請求人から平成23度の台帳価格について審査の申出を受けたことから、本件土地の実地調査を実施したところ、本件土地と本件請求人所有地との境界には高さ約1mのブロック塀があること、本件土地は雑草が繁茂し整地されていないのに対し、本件請求人所有地は砂利を敷き詰め整地され、調査日現在では賃貸されていないものの有料駐車場として使用可能な状態であることなどを把握した。
  a市評価審査委員会は、実地調査の結果からすると、a市長による上記の評価方法に合理性があるとはいえず、本件土地は一筆一画地として評価すべきであり、そうすると、本件土地については無道路地として評価されなければならないとし、平成23年度の台帳価格について、固定資産評価基準及びa市土地評価事務取扱要領に基づき、本件請求人所有地の前面道路に付された平成23年度の固定資産税の路線価●円に奥行価格補正率0.98、通路開設補正率0.7及び無道路地補正率0.6をそれぞれ乗じた金額に地積を乗じて、●円と決定した。
 本件土地の現況
  当審判所の現地調査によれば、本件土地の平成24年9月12日現在の現況は、上記ウの調査時点と同じく、本件土地と本件請求人所有地との境界がブロック塀により明確に区分されており、公道に接する部分はなく無道路地であることが確認され、また、請求人の答述及び不動産鑑定士に対する近隣住民の回答などからすると、本件土地については、少なくとも3年の間に地目の変更及び土地の形状の変化の事実があったとは認められないことから、平成22年1月1日以降の本件土地の現況は、当審判所の調査時点の現況と同様であったと認められる。
(2)  法令解釈
 登録免許税法10条1項は、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額について、当該登記の時における不動産の価額による旨規定しているところ、当該登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における不動産の客観的交換価値、すなわち時価であると解される。
 登録免許税法附則7条は、同法10条1項の課税標準たる不動産の価額について、当分の間、台帳価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定しているが、これは、登録免許税が、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する自動確定方式による国税で、流通税的な性格を有し、このような性格を持つ登録免許税において、登記官が、課税標準たる不動産の登記の時における時価をその都度判断することは容易でなく、登記の迅速処理という点から問題が生じるため、登記事務の迅速化等を考慮して規定したものと解される。
 上記ア及びイからすると、簡易迅速な税額確定が求められる登録免許税においては、台帳価格という課税基準を一律に適用することにより課税の公平が担保されることから、登録免許税法10条1項に規定する課税標準たる不動産の価額は、基本的には台帳価格によるべきであると解されるが、台帳価格が何らかの理由により不動産の時価を表していない場合には、他の方法により求めた不動産の価額(時価)を登録免許税の課税標準として採用することができると解するのが相当である。
(3)  本件への当てはめ
 本件土地の課税標準
  本件土地の登記の場合における課税標準の額は本件登記の時における本件土地の時価であると解され、当該課税標準の額については、本件登記の申請の日が平成22年12月21日であるから、平成22年1月1日現在における本件土地の台帳価格を基礎とすることができる。
  しかしながら、本件土地は、平成22年1月1日においても無道路地であったと認められるのに対し、a市長による平成22年度の台帳価格の評価方法によれば、当該台帳価格は無道路地として評価されていなかったものと認められるから、当該台帳価格は本件土地の時価を表していない場合も想定され、そして、台帳価格が何らかの理由により不動産の時価を表していない場合、課税標準たる不動産の価額は、他の方法により求めた不動産の価額(時価)を登録免許税の課税標準として採用することができると解されることから、以下、本件土地の時価について検討する。
 本件土地の時価
(ア)当審判所において、本件土地の近隣地域における不動産鑑定の精通者である不動産鑑定士に対して、本件請求人所有地を取得する場合における本件請求人所有地の価格について照会したところ、不動産鑑定士から、本件請求人所有地の標準地価格が●円、時点修正率が91.5%、標準化補正率が100%及び買い増し率が110%であるとする意見書の提出を受けた。
  当該意見書は、その評価において、本件標準地の公示価格を基に時点修正及び個別的要因の格差補正を行った上、買い増し率についても考慮して評価していることから、本件請求人所有地を取付道路として取得する場合の価額の算定方法として合理的なものであると認められる。
  そこで、当審判所において、当該意見書を基に、本件請求人所有地の全てを取付道路として取得することを想定した画地(本件画地)の価額及び取付道路の取得費をそれぞれ算定すると、本件画地の価額は●円となり、取付道路を取得する費用(本件請求人所有地の価格)は14,914,678円となることから、本件土地の価額は●円になると認められる。
(イ)不動産の価額たる土地の時価とは、一定の幅をもった概念であると解されるから、時価の算定に当たり合理性のある算定方法が複数ある場合には、それぞれの算定方法に従って算定された各価額の範囲をもって時価相当額と解すべきであるが、本件においては、取引事例比較法が採用できないこと、本件土地の売買価格100万円は、早期売却という個別的事情が伺われることから、本件土地の時価を表しているとはいえないこと、他に本件土地の時価を評価する合理的な手法が見当たらないことからすると、本件土地の時価相当額は、上記により算出した本件土地の価額によらざるを得ないため、本件土地の時価は上記により求めた本件土地の価額●円になると認められる。
 課税標準たる本件土地の価額
  本件土地の平成22年度の台帳価格●円は、上記イの本件土地の時価を上回る価格であり、本件土地の時価を表していないと認められるため、本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額は、本件土地の時価である●円とするのが相当である。
 請求人の主張について
  請求人は、a市評価審査委員会が決定した平成23年度の台帳価格●円をもって、本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額とすべきである旨主張するが、a市評価審査委員会が決定した台帳価格は本件土地の平成23年度の台帳価格であるから、これをもって課税年度の異なる平成22年度の台帳価格とみなして本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額とすることはできないため、主張は理由がない。
(4)  本件通知処分について
 本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額は●円、課税標準の額は●円となり、本件登記の申請に係る登録免許税の額●円は請求人が納付した登録免許税の額●円を下回るから、本件通知処分は、課税標準の額●円及び登録免許税の額●円を超える部分につき取り消すべきである。
  =一部取消=

3. 本裁決に対するコメント
(1)  不動産登記に係る登録免許税の課税標準
 登録免許税法10条1項は、不動産、船舶、ダム使用権又は公共施設等運営権の登記又は登録の場合における課税標準たる不動産、船舶、ダム使用権又公共施設等運営権(不動産等)の価額は、当該登記又は登録の時における不動産等の価額による旨規定し、不動産の登記をする際の課税標準である「不動産の価額」については、登録免許税が、当該登記がされることによってその対象とされた財産権が保護されるという利益を受けることに着目した上で、登記を担税力の間接的表現としてとらえ、それを課税の対象とする租税であることに照らし、登記がされる不動産の当該登記の時における時価、すなわち、客観的な交換価値を意味するものと解されている(東京地裁平成24年10月31日判決・LEX/DB25498013。なお、大阪高裁昭和53年8月25日判決・税務訴訟資料102号241頁・LEX/DB21063011参照)ところ、同法附則7条において、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在における台帳価格を基礎として政令で定める価額によることができるとする、登録免許税法10条1項の原則に対する特例が設けられている(清水 湛「登録免許税法詳解」5頁参照)。
(2)  登録免許税法10条1項と同法附則7条の適用関係
 登録免許税法附則7条の規定は同法10条1項の特例であることから、基本的には、前者が後者に優先して適用されることになるが、前者の規定は、@登記官は不動産の時価を評価することを専門とするものではないことから、登記の都度個々の不動産の価額を評価するものとすることは現実的でないばかりか、その評価が区々になるおそれもあること、A固定資産税に係る固定資産の評価の制度は個別の固定資産ごとに固定資産評価基準に基づき評価するものとされており、全国的に均衡が図られていることから、その評価の結果に基づき決定され固定資産課税台帳に登録される固定資産の価格を基礎とすることで、登記実務上、公平性を確保しつつ統一的かつ円滑に登録免許税に係る事務を処理することが可能になること、B固定資産の評価等については毎年所有者等に通知され、登記の申請人にとっても容易にその内容を知ることができ、便宜であること等から、納税者の便宜を図るとともに公平な課税を実現するために定められたものと解されている(前掲:東京地裁判決参照)ことに照らし、台帳価格自体が固定資産評価基準に基づき評価されたものでない場合にあっては、当該台帳価格は附則7条にいう「固定資産税課税台帳に登録された当該不動産の価格」に当たらないとして、登録免許税法10条1項に基づき、当該不動産の時価を登録免許税の課税標準とすることも許容されると解するのが相当である。
(3)  本裁決について
 本裁決の認定事実によると、本件登記の申請の日現在における本件土地の現況は、本件土地と本件請求人所有地との境界がブロック塀により明確に区分されており、本件土地は公道に接する部分がなく、無道路地であった(前記2(1)エ)が、本件土地の平成22年度の台帳価格は、この現況とは異なり、無道路地として評価されていなかった(前記2(1)イ・ウ)というのであるから、当該台帳価格は固定資産評価基準に基づき評価されたものといえないため、当該台帳価格ではなく、本件土地の時価を登録免許税の課税標準とすることも許容されるということになり、したがって、「本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額は本件土地の時価●円である」とした本裁決の判断は相当といえる。
 また、固定資産評価審査委員会による台帳価格の決定に不服がある固定資産税又は都市計画税の納税者は、固定資産評価審査委員会に対する審査の申出、及び取消しの訴えを提起することによってのみ争うことができるとされている(地方税法434条2項、都市計画税法702条の8第2項)が、登録免許税法には、同様の規定が定められていないため、登録免許税に係る審査請求において、審査庁が、台帳価格の適否をも審査の対象とし、当該不動産の価額を認定することは許容されることになる。
 本裁決は、台帳価格の算定の前提とした当該土地の現況に誤認があった場合の登録免許税法10条1項と同法附則7条の適用関係及び登録免許税の処分対する審査請求に係る審査の対象について判断を示したものとして、実務上、参考となる。



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