情報提供 TKC税務研究所
税法話題の判例紹介 ◆ 平成29年12月・通巻第220号
採石のための土地及び立木の取得に係る仕入税額控除の時期は採石法又は森林法に基づく許認可を受けた日ではなく、その引渡を受けた日であるとした事例

【文献番号】 25503537
【文献種別】 判決/名古屋地方裁判所(第一審)
【裁判年月日】 平成24年7月26日
【事件名】 消費税及び地方消費税更正処分等取消請求事件
【判示事項】
1. 土地の取得は「課税仕入れ」に含まれないか(積極)。
(要旨文献番号:60065470)
2. 「課税仕入れ」の判定は、取引の経済的実質に着目して行うべきか(消極)。
(要旨文献番号:60065471)
3. 消費税法30条1項1号の「当該課税仕入れを行った日」の意義。
(要旨文献番号:60065472)
4. 採石のための土地及び立木の取得に係る仕入税額控除の時期を、森林法等の許認可を受けた日と解することはできないとした事例。
(要旨文献番号:60065473)
5. 租税法律主義と信義誠実の原則の適用。
(要旨文献番号:60065474)
6. 過去の税務調査における指摘に従ったことをもって、信義則の適用があるということはできないとした事例。
(要旨文献番号:60065475)
【裁判結果】 棄却
【上訴等】 確定
【参照法令】 消費税法2条、6条〜8条、30条
農地法3条



《本判決の解説》

1. 事案の概要
(1)  X会社(原告)の事業と本件各土地等の購入等
  X会社は、砂利・砕石製造販売、コンクリート製品及びセメント製品の製造・加工・販売、土木工事一式、建築工事の設計・施工等を目的とする株式会社である。
  X会社は、平成6年4月13日から平成18年11月4日までの間、岩石及び土砂(岩石等)を採取する目的で、地権者から、本件各土地及び本件各土地に存する立木(本件各立木)(本件各土地等)を購入した。
  X会社は、平成18年8月14日付けで、県建設事務所長に対し、本件各土地に係る採取計画の認可を申請し、事務所長は、同年9月1日付けで、採石法33条に基づき、採取計画を認可した。
  X会社は、平成18年9月15日付けで、県知事に対し、本件各土地を含む91筆の土地につき、開発行為地の拡大等に係る林地開発変更許可申請をし、県知事は、同年10月10日付けで、森林法10条の2第1項に基づき、開発行為を許可した。
  X会社は、本件各土地等の代金を支払った日までに、支払った金額の一部を「土地勘定」に計上するとともに、残額と本件各土地等の取得のために協力者等から提供を受けた役務(「本件各役務提供」。本件各土地等の取得と併せて「本件各土地取得等」という。)の対価の額との合計額(本件各土地取得等計上額)を「原料地原石仕入勘定」に計上した。
  本件各土地取得等計上額は、 採石法33条に基づく採取計画の認可又は森林法10条の2に基づく開発行為の許可(森林法等の許認可)が得られるまでの間、そのまま留保された。
(2)  従前の経緯
  X会社は、山林Bにつき、地権者から順次土地を購入した都度、採石法33条に基づく採取計画の認可を得た上で採取した岩石から砂利・砕石等を製造販売し、また、山林Cにつき、地権者から順次土地を購入し、森林法10条の2に基づく開発行為の許可を得た上で土砂の採取を実施し、販売してきた。
  国税局の職員は、平成6年1月1日から同年12月31日までの事業年度(課税期間)を対象とした平成7年7月の税務調査及び平成11年7月1日から平成12年6月30日までの事業年度(課税期間)を対象とした平成13年5月の税務調査の際、上記アの土地購入について、X会社が行っていた課税仕入れとして消費税の仕入税額控除をするという経理処理を否認せず、立木の取得に係る仕入税額控除の時期を森林法等の許認可の時点とする修正申告を慫慂した。
(3)  本件更正処分に関する経過
  X会社は、平成19年8月29日、Y税務署長に対し、平成18年7月1日から平成19年6月30日までの課税期間(本件課税期間)の消費税等について、確定申告書(本件確定申告書)を提出した。
  本件確定申告書においては、本件各土地の取得が課税仕入れに該当し、かつ、本件各土地等の取得及び本件各役務提供に係る仕入税額控除の時期が森林法等の許認可を得た日の属する課税期間であるという前提の下に、本件各土地等の代金及び本件各役務提供の対価の合計額から、土地勘定計上額及び平成18年6月期より前の課税期間において仕入税額控除の対象とした金額を差し引いた金額の合計額のうち2億7798万7412円を本件課税期間における課税仕入れに係る支払対価の額に算入して、3億5724万3166円の仕入税額控除が行われていた。
  Y税務署長は、平成20年11月26日付けで、本件課税期間の消費税等に係る更正処分(本件更正処分)をした。
  本件更正処分は、本件各土地の取得は課税仕入れに該当せず、本件各立木の取得及び本件各役務提供に係る仕入税額控除の時期は引渡し又は役務の提供を受けた日の属する課税期間であることを前提として、課税仕入れに係る支払対価の額の減算及び加算を行い、仕入税額控除を3億4686万6927円の限度でのみ認めるものであった。
  X会社は、適法な不服申立手続を経て、本件更正処分の取消しを求めて本件訴えを提起した。

2. 本判決の要旨
(1)  本件各土地の取得と課税仕入該当性
  消費税は、流通の各段階において、課税資産の譲渡等に対し、その譲渡等の対価の額を課税標準として課税されるものであり、消費税法においては、取引の各段階で課税されることによる税負担の累積を防止するため、当該課税の前段階の税額にあたる課税仕入れに係る消費税額を課税資産の譲渡等に係る課税標準額に対する消費税額から控除するものとされている。
  このような観点から、消費税法は、「課税仕入れ」の意義について、2条1項12号において、「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、7条1項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び8条1項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。」旨規定し、「課税資産の譲渡等」の意義について、同項9号において、「資産の譲渡等のうち、6条1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう。」旨定め、そして、同法6条1項は、「国内において行われる資産の譲渡等のうち、別表第一に掲げるものには、消費税を課さない。」と規定し、別表第一の1号には、「土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)」を掲げている。
  このような課税仕入れの仕入税額控除の趣旨や目的、消費税法の規定等に照らすと、同法上、非課税取引とされている「土地の譲渡」が同法2条1項12号所定の課税仕入れに含まれないことは明らかである。
  @X会社と地権者(売主)との間では、本件各土地等を目的物とする不動産売買契約書が取り交わされ、土地代及び立木代として代金の授受が行われたこと、A本件各土地については、地権者からX会社に対する所有権移転登記がされたこと、B本件各土地の地権者(売主)のうち、別表順号15ないし21の土地の売主、順号22及び33の土地の持分の売主、順号30ないし32の土地の売主並びに順号34ないし36の土地の売主は、いずれも本件各土地の取引による所得が土地の譲渡所得に該当することを前提として、代金額全額を分離課税の長期譲渡所得として確定申告をしたことが認められ、これらの事実によると、本件各土地の取引は、本件各土地の売買契約であって、消費税法において課税仕入れには当たらないとされている「土地の譲渡」に該当するというほかはない。
  X会社は、@X会社は、岩石等の購入を目的として本件各土地の取引を行ったものであり、売主もこれを承知していた、A代金額は採石量によって算出された、B本件各土地は岩石等の価値を除くと経済的に無価値であるとして、本件でされた取引は「土地の譲渡」ではなく、採石権の設定ないし土石の売買に該当する旨主張するが、@の点は、契約締結に当たっての動機にすぎず、Aの点は、仮にそのような事実があったとしても、代金額の定め方の問題にすぎないから、いずれも前記認定を左右するものではなく、Bの点も、仮に、本件各土地が岩石等の価値を除くと実質的には無価値であるため、本件でされた取引が経済的には採石権の設定ないし土石の売買と同等に評価できるものであるとしても、これによって直ちに本件各土地の取引の法的性質が左右されるわけではないから、前記認定を覆すものではない。
  X会社は、@消費税にあっては、法形式にとらわれることなく、取引の経済的な実質に着目して、課税仕入れに該当するか否かを判断すべきである、A岩石等の採取が土地の賃貸借契約によって行われるか、土地の売買契約によって行われるかによって、課税仕入れの該当性について異なる取扱いとなるのは、公平原則に反する、B本件各土地の課税仕入れを認めないのは、土石又は砂利の採取の目的で取得した土地の取得価額のうち土石又は砂利に係る部分について、損金算入を認める法人税の取扱いと矛盾すると主張する。
  しかしながら、@の点については、課税仕入れに該当するためには、消費税法6条1項による非課税取引でないことを要することが法律で明確に定められているところ、非課税取引に該当するか否かの判断を私法上の法律関係に即して行うことは当然であって、仮に、当事者が選択した法形式にかかわらず「経済的な実質」によって該当性を判断することとなれば、法的安定性が害されることは明らかである。
  Aの点については、岩石等の採取が土地の賃借権に基づき行われる場合と土地を購入した上で行われる場合とで、課税仕入該当性の点で異なる取扱いを受けることは、土地利用権の設定と所有権移転という法的性質の違いから生じるものであるから、何ら不合理なこととはいえず、公平原則に反して違法であるということもできない。
  Bの点については、法人税法が、法人の所得の適正な計算という観点から損金算入の可否を定めているのに対し、消費税法は、課税の累積を排除するために、流通の前段階の税額を控除する仕組みを採ったことから、課税仕入れに係る仕入税額控除を定めているのであって、両者の趣旨、目的が異なる以上、その取扱いに差違があることに問題があるということはできない。
  以上のとおり、本件各土地の取得は課税仕入れに該当しないから、仕入税額控除の対象にはならない。
(2)  仕入税額控除の時期について
  消費税法30条1項1号によれば、国内において課税仕入れを行った場合、仕入税額控除の時期は、「当該課税仕入れを行った日」の属する課税期間であるところ、同法2条1項12号の「課税仕入れ」の定義に照らせば、「当該課税仕入れを行った日」とは、当該課税仕入れに該当することとされる資産を譲り受けた日又は役務の提供を受けた日をいうことは明らかであり、資産を譲り受けた日としては、その引渡しを受けた日をいうものと解するのが相当である。
  @本件各立木は、本件各土地と共にX会社に譲渡され、代金支払と同時に引き渡されることが予定されていたこと、A本件各立木のうち、別表1順号37の立木(代金4085円)については本件課税期間中に代金支払が行われたが、その余の立木については平成18年6月以前に代金が支払われたこと、B本件各役務提供は、本件各土地等についての売買契約締結を円滑に進めることへの協力を内容とするものであり、本件各土地等の売買契約締結日には完了していたところ、本件各土地等の売買契約の締結は全て平成18年6月以前に行われたものであることが認められるから、本件各立木及び本件各役務提供のうち、別表順号37の立木は本件課税期間における仕入税額控除の対象となるが、それ以外のものは、本件課税期間中に課税仕入れが行われたとはいえず、本件課税期間における仕入税額控除の対象にはならない。
  X会社は、本件各土地等の取引は採石を目的とするものであるから、本件各立木の取得及び本件各役務提供に係る仕入税額控除の時期は、森林法等の許認可を受けた日の属する課税期間であると主張するが、X会社の解釈は、消費税法30条1項1号、2条1項12号の文理から離れる上、課税の累積を排除するために流通の前段階の税額を控除するという仕入税額控除の趣旨からすれば、採石のための立木の伐採等が可能となる時期まで仕入税額控除を待つ意味はない。
  X会社は、@森林法等の許認可を受けるまでは、本件各立木を実質的に支配したことにはならないから、引渡しを受けただけでは課税仕入れがあったとはいえない、A許認可がされなければ、売買契約の効力が失われるから、農地の譲渡の時期が農地法上の許可のあった日とされるのと同様に解すべきであると主張するが、本件各土地等の取引において、引渡しがあったにもかかわらず、本件各立木に対する私法上の支配が買主に移転しない特段の事情は見当たらないし、許認可は農地法3条の許可とは異なり、所有権移転の効力を左右するものでなく、本件各土地等の取引において許認可が意思表示の効力発生要件とされていたわけでもないから、主張は採用できない。
(3)  信義則違反の有無について
  X会社は、本件更正処分は信義則に違反する違法な処分である旨主張するが、本件においては、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお本件更正処分に係る課税を免れしめてX会社の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情(最高裁昭和62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事152号93頁参照)が存するとまでいうことはできないから、信義則の法理の適用を考える余地はない。
=棄却(確定)=

3. 本判決に対するコメント
(1)  課税資産の取得と仕入税額控除の時期
  消費税法30条1項1号は、「事業者・・・が、国内において課税仕入れを行つた場合・・・には、当該課税仕入れを行つた日・・・の属する課税期間の45条1項2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額・・・の合計額を控除する。」と規定し、ここにいう「課税仕入れ」の意義につき、同法2条1項12号は、「事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供・・・を受けること(当該他の者が事業として、当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することになるもので、・・・輸出免税等・・・その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。」と規定していることや仕入税額控除の趣旨等を勘案すれば、資産を譲り受けた(取得した)場合の「課税仕入れを行った日」については、課税資産の譲渡の時期と同様、当該資産の引き渡しを受け日であると解するのが相当である(東京高裁平成9年6月30日判決・税務訴訟資料223号1290頁・LEX/DB28022175、国税不服審判所平成24年7月24日裁決・裁決事例集88号391頁・LEX/DB26012609参照)。
(2)  森林法等の許認可と仕入税額控除の時期
  X会社は、森林法等の許認可を受けた日が本件各土地取得等に係る仕入税額控除の時期である旨主張しているが、@採石法33条の規定は、「採石業者は、岩石の採取を行おうとするときは、当該岩石の採取を行う場所・・・ごとに採取計画を定め、当該岩石採取場の所在地を管轄する都道府県知事・・・の認可を受けなければならない。」という、採石業者が岩石の採取を行おうとする場合について、採石業者に採取計画の作成を義務付け、その認可を受けなければならないとするものであって、当該岩石採取場の所有権移転についての認可を定めるものではなく、また、A森林法10条の2第1項の規定は、「地域森林計画の対象となっている民有林・・・において開発行為・・・をしようとする者は、農林水産省令で定める手続に従い、都道府県知事の許可を受けなければならない。」という、民有林において開発行為を行う者に対して、対象となる開発行為について許可を受けなければならないとするものであって、当該民有林の所有権移転についての許可を定めるものではなく、いずれの規定も、本件各土地等の所有権の移転(本件各土地等の取得)についての認可又は許可を求めるものではなく、本件各土地等の引き渡しを受けたX会社が、その後において、岩石の採取又は本件各土地についての開発行為を行うに当たっての認可又は許可を求めるものであるから、森林法等の許認可は本件各土地取得等に係る仕入税額控除の時期を左右するものではない、ということになる。
(3)  本判決について
  以上のとおりであるから、「順号37の立木は本件課税期間における仕入税額控除の対象となるが、それ以外のものは、本件課税期間中に課税仕入れが行われたとはいえず、本件課税期間における仕入税額控除の対象にはならない」とした本判決の判断は正当なものといえる。
  本判決は、採石法33条に基づく認可及び森林法10条の2第1項に基づく許可と仕入税額控除の時期について判断したものとして、本件各土地の取得の課税仕入該当性についての判断を含め、実務上の参考となる。


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