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《書 誌》
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【文献番号】 26012639
【文献種別】 裁決/国税不服審判所
【裁決年月日】 平成24年12月 5日
【裁決事項】 1. 登録免許税法10条1項に規定する不動産の価額。
(要旨文献番号:66015333)
  2. 登録免許税法附則7条の規定の趣旨。
(要旨文献番号:66015334)
  3. 登録免許税法10条1項に規定する不動産の価額と同法附則7条に規定する台帳価格との関係。
(要旨文献番号:66015335)
  4. 登記の時における土地の台帳価格が時価を上回っているとして、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分の一部が取り消された事例。
(要旨文献番号:66015336)
【裁決結果】 一部認容
【掲載文献】 裁決事例集89集457頁
【参照法令】 登録免許税法10条
登録免許税法附則7条
【評釈等所在情報】 〔日本評論社〕
旬刊速報税理32巻23号36頁
6 登録免許税法関係 事例21 課税標準(土地)〈裁決事例集(平成24年10月~12月分)(資料)〉
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 《全 文》

【文献番号】26012639  

平成24年12月5日裁決
《裁決書(抄)》


1 事実
(1)事案の概要
 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、土地の所有権移転登記を受けるに当たり、当該土地の平成22年度の地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第9号に規定する固定資産課税台帳に登録された価格(以下「台帳価格」という。)に基づいて登録免許税を納付したが、当該土地の平成23年度の台帳価格が減額決定されたため、登記の時の課税標準たる価額についても当該減額決定された後の価格によるべきであるから、納付した登録免許税に過誤納があったとして、原処分庁に対し還付通知請求書を提出したところ、原処分庁が、還付通知をすべき理由がない旨の通知処分をしたのに対し、請求人が、同処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯及び基礎事実
 次の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、平成22年12月21日に、請求人が所有するa市e町○-○の土地(平成15年8月28日に取得したもので、地目は宅地、地積は162.84平方メートルである。以下「本件請求人所有地」という。)に隣接するa市e町○-○の土地(地目は宅地、地積は190.64平方メートルであり、以下「本件土地」という。)をJから取得した。
 なお、本件請求人所有地及び本件土地の概略図は、別紙1のとおりである。
ロ 請求人は、平成22年12月21日に原処分庁に対して、本件土地について、原因を平成22年12月21日売買、登録免許税の課税標準の額を○○○○円及び登録免許税の額を○○○○円とそれぞれ記載した登記申請書に、当該税額○○○○円に相当する金額の収入印紙を貼付して提出することにより当該登録免許税を納付し、所有権移転登記を受けた(以下「本件登記」という。)。
 なお、当該申請書には、平成22年12月14日付でa市長が作成した本件土地の固定資産価格通知書が添付されており、当該通知書によれば、平成22年度の台帳価格は○○○○円である。
ハ a市長は、本件土地の平成23年度の台帳価格を8,930,340円と決定した。
ニ 請求人が、上記ハの決定に対し、地方税法第432条《固定資産課税台帳に登録された価格に関する審査の申出》第1項の規定に基づき、平成23年5月30日にa市固定資産評価審査委員会(以下「a市評価審査委員会」という。)に本件土地の平成23年度の台帳価格について審査の申出をしたところ、a市評価審査委員会は、当該申出に対して、同年7月27日付で本件土地の平成23年度の台帳価格を○○○○円と決定した。
ホ 請求人は、平成23年10月26日付で原処分庁に対し、登録免許税法第31条(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)《過誤納金の還付等》第2項の規定に基づき、上記ニのa市評価審査委員会の決定書を添付し、本件登記の申請に係る課税標準の額及び登録免許税の額の正当額がそれぞれ○○○○円及び○○○○円、過誤納額が○○○○円であるとして還付通知請求書を提出したところ、原処分庁は、同年11月18日付で還付通知をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
ヘ 請求人は、本件通知処分を不服として、平成23年12月19日に審査請求をした。
(3)関係法令等
イ 登録免許税法第10条《不動産等の価額》第1項は、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額は、当該登記の時における不動産の価額による旨規定している。
ロ 登録免許税法第31条第1項第3号は、登記機関は、登記等を受けた者が過大に登録免許税を納付して登記等を受けたときには、登記等を受けた者の当該登録免許税に係る納税地の所轄税務署長に、当該過大に納付された登録免許税の額等を通知しなければならない旨規定している。
 また、同条第2項は、登記等を受けた者は、当該登記等の申請書に記載した登録免許税の課税標準又は税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、登録免許税の過誤納があるときは、当該登記等を受けた日から1年を経過する日までに、その旨を登記機関に申し出て、同条第1項の通知をすべき旨の請求をすることができる旨規定している。
ハ 登録免許税法附則第7条《不動産登記に係る不動産価額の特例》は,不動産の登記の場合における同法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在における台帳価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定している。
ニ 登録免許税法施行令附則第3項第2号は、登録免許税法附則第7条に規定する政令で定める価額は、登記の申請の日がその年の4月1日から12月31日までの期間内であるものは、その年の1月1日現在における台帳価格に100分の100を乗じて計算した金額とする旨規定している。 
ホ 地方税法第432条第1項は、固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の台帳価格について不服がある場合においては、公示の日以降、納税通知書の交付を受けた日の翌日から起算して60日以内に、文書をもって、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる旨規定している。
ヘ 地価公示法第2条《標準地の価格の判定等》第1項は、土地鑑定委員会は、都市計画法第4条第2項に規定する都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域(以下「公示区域」という。)内の標準地について、毎年一回、一定の基準日における当該標準地の単位面積当たりの正常な価格を判定し、これを公示するものとする旨規定している。
 また、地価公示法第2条第2項は、正常な価格とは、土地について、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格をいう旨規定している。
ト 地価公示法第3条《標準地の選定》は、標準地は、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について選定するものとする旨規定している。
チ 地価公示法第8条《不動産鑑定士の土地についての鑑定評価の準則》は、不動産鑑定士は、公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常な価格を求めるときは、同法第6条《標準地の価格等の公示》の規定により公示された標準地の価格(以下「公示価格」という。)を規準としなければならない旨規定している。
リ 地価公示法第11条《公示価格を規準とすることの意義》は、公示価格を規準とするとは、対象土地の価格を求めるに際して、当該対象土地と標準地の位置、地積、環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因との比較を行い、当該標準地との公示価格と当該対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいう旨規定している。
ヌ 不動産鑑定評価基準(平成2年11月1日付国土庁事務次官通知「不動産鑑定評価基準の設定について」(平成21年8月28日付国土交通省事務次官通知「不動産鑑定評価基準等の一部改正について」による改正後のもの))総論第7章第1節《価格を求める鑑定評価の手法》は、不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法として、原価法、取引事例比較法及び収益還元法があるところ、取引事例比較法は、近隣地域等において対象不動産と類似の不動産の取引が行われている場合に有効である旨定めている。
 なお、いずれの手法においても、取引事例等に係る取引等が特殊な事情を含み、これが取引事例等の価格に影響を及ぼしているときは適切に補正(事情補正)しなければならない旨定めている。
 また、総論第8章第8節《鑑定評価額の決定》は、公示区域において土地の正常価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない旨定めている。
(4)争点
 本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額はいくらか。


2 主張
請求人
 a市評価審査委員会は、請求人の審査の申出により、本件土地の平成23年度の台帳価格を○○○○円と決定しているところ、本件土地については、平成22年度と平成23年度において、地目の変更や土地の形状の変化はないことから、本来、平成22年度の台帳価格は、a市評価審査委員会の決定した平成23年度の台帳価格と同額となるべきである。
 したがって、本件登記の時(平成22年12月21日)における課税標準たる本件土地の価額は、○○○○円とすべきである。
原処分庁
 本件登記の時(平成22年12月21日)における登録免許税の課税標準たる本件土地の価額については、平成22年1月1日現在の台帳価格である○○○○円としたものであるところ、当該課税標準は、登録免許税法第10条第1項、同法附則第7条及び登録免許税法施行令附則第3項第2号の規定に基づき適正に処理されている。
 請求人は、a市評価審査委員会の平成23年度の本件土地の台帳価格の決定をもって、本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額を○○○○円として○○○○円の還付請求ができる旨主張する。
 しかしながら、a市評価審査委員会は、飽くまで平成23年度の本件土地の台帳価格を決定したものであり、本件登記の申請に係る登録免許税の課税標準として適用すべき平成22年1月1日現在の台帳価格を決定したものではないことから、請求人の主張には理由がない。


3 判断
(1)認定事実
 請求人提出資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
イ 本件土地の売買の経緯
(イ)Jは、K社に本件土地を早期に売却したいと依頼し、売却価格もK社に一任していた。
(ロ)請求人は、本件土地に隣接する本件請求人所有地を所有していたことから、K社から本件土地の売買について打診を受け、平成22年12月21日にJと売買価格を1,000,000円、媒介者をK社とする本件土地の売買契約を締結した。
ロ a市長による本件土地の台帳価格の決定の経緯
(イ)平成22年度の台帳価格
 a市長は、本件請求人所有地の前面道路に付された平成22年度の固定資産税の路線価である○○○○円に本件土地の地積190.64平方メートルを乗じて、本件土地の平成22年度の台帳価格を○○○○円と決定した。
(ロ)平成23年度の台帳価格
 a市長は、本件土地と本件請求人所有地を併せ二筆一画地として評価し、別表1の「a市長」の「評価額」欄のとおり、本件土地の平成23年度の台帳価格を8,930,340円と決定した。
ハ a市評価審査委員会による本件土地の平成23年度の台帳価格の決定の経緯
 a市評価審査委員会は、上記1の(2)のニのとおり、請求人から平成23年度の台帳価格について審査の申出を受けたことから、本件土地の実地調査を実施したところ、本件土地と本件請求人所有地との境界には高さ約1mのブロック塀があること、本件土地は雑草が繁茂し整地されていないのに対し、本件請求人所有地は砂利を敷き詰め整地され、調査日現在では賃貸されていないものの有料駐車場として使用可能な状態であることなどを把握した。
 そこで、a市評価審査委員会は、上記の実地調査の結果からすると、a市長による上記ロの(ロ)の評価方法には合理性があるとはいえず、本件土地は一筆一画地として評価すべきであり、そうすると、本件土地については無道路地として評価されなければならないとし、本件土地の平成23年度の台帳価格について、地方税法第388条《固定資産税に係る総務大臣の任務》第1項の固定資産評価基準及びa市土地評価事務取扱要領に基づき、本件請求人所有地の前面道路に付された平成23年度の固定資産税の路線価○○○○円に奥行価格補正率0.98、通路開設補正率0.7及び無道路地補正率0.6をそれぞれ乗じた金額に地積190.64平方メートルを乗じて、別表1の「a市評価審査委員会」の「評価額」欄のとおり○○○○円と決定した。
ニ 本件土地の現況
 当審判所の現地調査によれば、本件土地の現況(平成24年9月12日現在)は、上記ハの調査時点と同じく、本件土地と本件請求人所有地との境界が、ブロック塀により明確に区分されており、公道に接する部分はなく無道路地であることが確認され、また、請求人の答述及び不動産鑑定士に対する近隣住民の回答などからすると、本件土地については、少なくとも3年の間に地目の変更及び土地の形状の変化の事実があったとは認められないことから、平成22年1月1日以降の本件土地の現況は、当審判所の調査時点の現況と同様であったと認められる。
(2)法令解釈
イ 登録免許税法第10条第1項に規定する不動産の価額
 登録免許税法第10条第1項は、不動産の登記の場合における課税標準たる不動産の価額について、当該登記の時における不動産の価額による旨規定しているところ、当該登記の時における不動産の価額とは、当該登記の時における不動産の客観的交換価値、すなわち時価であると解される。
ロ 登録免許税法附則第7条に規定する台帳価格
 登録免許税法附則第7条は、同法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額について、当分の間、台帳価格を基礎として政令で定める価額によることができる旨規定しているが、これは、登録免許税が、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する自動確定方式による国税で、流通税的な性格を有し、このような性格を持つ登録免許税において、登記官が、課税標準たる不動産の登記の時における時価をその都度判断することは容易ではなく、登記の迅速処理という点から問題が生じるため、登記事務の迅速化等を考慮して規定したものと解される。
ハ 登録免許税法第10条第1項に規定する不動産の価額と同法附則第7条に規定する台帳価格の関係
 上記イ及びロからすると、簡易迅速な税額確定が求められる登録免許税においては、台帳価格という課税基準を一律に適用することにより課税の公平が担保されることから、登録免許税法第10条第1項に規定する課税標準たる不動産の価額は、基本的には台帳価格によるべきであると解される。
 しかしながら、台帳価格が何らかの理由により不動産の時価を表していない場合には、他の方法により求めた不動産の価額(時価)を登録免許税の課税標準として採用することができると解するのが相当である。
(3)本件への当てはめ
イ 課税標準たる本件土地の価額について
 本件土地の登記の場合における課税標準の額は、上記(2)のイのとおり、本件登記の時における本件土地の時価であると解されるところ、当該課税標準の額については、上記(2)のロ及び上記1の(3)のニによれば、本件登記の申請の日が平成22年12月21日であるから、平成22年1月1日現在における本件土地の台帳価格を基礎とすることができる。
 しかしながら、本件土地は、上記(1)のニのとおり、平成22年1月1日においても無道路地であったと認められるのに対し、a市長による上記(1)のロの(イ)の平成22年度の台帳価格の評価方法によれば、当該台帳価格は無道路地として評価されていなかったものと認められることから、当該台帳価格は、本件土地の時価を表していない場合も想定される。そこで、上記(2)のハのとおり、課税標準たる不動産の価額は、台帳価格が何らかの理由により不動産の時価を表していない場合に、他の方法により求めた不動産の価額(時価)を登録免許税の課税標準として採用することができると解されることから、本件土地の時価について以下検討する。
(イ)本件土地の時価
A 取引事例比較法による本件土地の時価相当額の算定
 取引事例比較法は、当審判所においても相当と認められる鑑定評価の基準である不動産鑑定評価基準で、有効な鑑定評価の手法であるとされており、実際に取引された土地等の売買事例(以下「取引事例」という。)に係る取引価格を基に評価対象地の評価額を求める合理的な手法であることから、鑑定評価の手法として相当であると認められるところ、この取引事例比較法による鑑定手法の精度は、取引事例の選択の適否に依存しており、取引の当事者の思惑などの特殊な事情(売り急ぎや買い進みなど)が取引価格に影響を及ぼすものであるから、このような特殊な事情の存する取引事例を採用する場合には、当該事情を補正して正常な事情の下であったならば成立したであろうと認められる価格に補正(事情補正)することができる取引事例であるか否かを検討することが必要であり、事情補正ができる場合は取引事例として採用できるものと認められる。
 当審判所が、本件土地の近隣地域における取引事例を調査したところ、本件土地と公法上の規制等(近隣商業地域(建ぺい率80%、容積率200%)、準防火地域)が同一である近隣地域において、平成22年中に売買された土地の取引事例は、別表2のとおり、A土地及びB土地の2事例が認められる。
 しかしながら、当該各取引事例は、隣地所有者間のものであって、その取引価格は当該各取引の当事者間においてのみ経済的合理性が認められる価格であると認められ、合理的な事情補正を施すことができないから、取引事例比較法において採用すべき取引事例とは認められない。
 したがって、本件においては、取引事例比較法を採用することができない。
B 公示価格による本件土地の時価相当額の算定
(A)公示価格は、地価公示法第2条第1項に規定する「正常な価格」を判定したものであり、この「正常な価格」とは、同条第2項において、土地について自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格である旨規定していることからすれば、公示価格は、自由な取引が行われるとした場合に通常成立すると認められる価格、すなわち客観的交換価値(時価)をいうものと解することができる。そして、公示価格は、一般の土地の取引価格に対しての指標、不動産鑑定士の鑑定評価及び公共事業の買収価格等の規準とされるものである。
 本件の場合、本件土地の近隣地域内、本件請求人所有地の前面道路沿い、かつ、本件土地の東側約250m先に、地価公示法第3条に規定する標準地(標準地番号はa5-5。以下「本件標準地」という。)が存することから、本件標準地の公示価格を基に、当審判所においても相当と認められる基準である土地価格比準表(昭和50年1月20日付国土庁土地局地価調査課長通達「国土利用計画法の施行に伴う土地価格の評価等について」(平成6年3月15日付国土地第56号による改正後のもの))に準拠して、本件土地の時価相当額を算定することとする。
 なお、土地価格比準表は、無道路地の価額について、現実の利用に最も適した道路等に至る距離等の状況を考慮し取付道路の取得の可否及びその費用を勘案して適正に定めた率をもって評価する旨定めていることからすると、無道路地の評価については、取付道路を取得して袋地となることを想定して袋地の評価方法に準じて評価額を求め、この額から取付道路用地の取得費用等の額を差引き、無道路地の価額を求めることが相当である。
(B)本件において、本件土地の道路に面する利用可能な袋地を想定するに当たって取得する取付道路は、別紙2のとおり、道路に面する土地を、〔1〕本件請求人所有地の一部であるD土地、又は、〔2〕第三者所有のC土地の一部であるE土地のいずれかとすることが想定されるところ、本件請求人所有地は砂利を敷き詰め整地され駐車場として利用可能な状態にあり、一方、C土地には第三者の建物が建築され取付道路として利用可能な空地部分がないことが認められる。そうすると、本件請求人所有地には建物がなく、取付道路を開設できる実現可能性が高いことから、D土地を取付道路とすることが相当である。
 また、無道路地の取付道路については、建築基準法第43条《敷地等と道路との関係》第1項において、建築物の敷地は道路に2m以上接しなければならないと規定していることから、D土地の幅員は2mとするのが相当であるが、D土地を取得するとした場合には、本件請求人所有地の道路に面する幅が約5.5mであり残余の土地の利用が著しく困難となることから、土地の一部分だけを売買する契約は成立し難いものと認められ、本件請求人所有地の全てを取得することが合理的かつ実現可能性が高いと認められる。
 これらのことから、本件においては、本件土地の道路に面する利用可能な袋地とは、本件請求人所有地の全てを取付道路として取得することを想定した画地(以下「本件画地」という。)になる。
(C)ところで、当審判所において、本件土地の近隣地域における不動産鑑定の精通者である不動産鑑定士に対して、本件請求人所有地を取得する場合における本件請求人所有地の価格について照会したところ、不動産鑑定士から、別表3のとおり、本件請求人所有地の標準地価格が○○○○円、時点修正率が91.5%、標準化補正率が100%及び買い増し率が110%であるとする意見書の提出を受けた。当該意見書は、その評価において、本件標準地の公示価格を基に時点修正及び個別的要因の格差補正を行った上、買い増し率についても考慮して評価していることから、本件請求人所有地を取付道路として取得する場合の価額の算定方法として合理的なものであると認められる。
 そこで、当審判所において、当該意見書を基に本件画地の価額及び取付道路の取得費をそれぞれ算定すると、本件画地の価額は、別表4の「本件画地の価額」の「評価額」欄のとおり、○○○○円となり、取付道路を取得する費用(本件請求人所有地の価格)は、同表の「取付道路の取得費」の「評価額」欄のとおり、14,914,678円となることから、本件土地の価額は、同表の「本件土地の価額」の「評価額」欄のとおり、○○○○円になると認められる。
(D)不動産の価額たる土地の時価とは、一定の幅をもった概念であると解されるから、時価の算定に当たり合理性のある算定方法が複数ある場合には、それぞれの算定方法に従って算定された各価額の範囲をもって時価相当額と解すべきである。
 しかし、本件においては、〔1〕上記Aのとおり、取引事例比較法が採用できないこと、〔2〕本件土地の売買価格1,000,000円は、上記(1)のイの(イ)及び(ロ)のとおり、早期売却という個別的事情が伺われることから、本件土地の時価を表しているとはいえず、課税標準たる本件土地の価額として採用することができないこと、〔3〕その他に本件土地の時価を評価する合理的な手法が見当たらないことからすると、本件土地の時価相当額は、上記(C)により算出した本件土地の価額によらざるを得ない。
 したがって、本件土地の時価は、上記(C)により求めた本件土地の価額である○○○○円になると認められる。
(ロ)課税標準たる本件土地の価額
 本件土地の平成22年度の台帳価格○○○○円は、上記(イ)のBの(D)の本件土地の時価を上回る価格であり、本件土地の時価を表していないと認められることから、本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額は、本件土地の時価である○○○○円とするのが相当である。
ロ 請求人の主張について
 請求人は、a市評価審査委員会が決定した平成23年度の台帳価格○○○○円をもって、本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額とすべきである旨主張する。
 しかしながら、a市評価審査委員会が決定した台帳価格は、上記(1)のハのとおり、本件土地の平成23年度の台帳価格であるから、これをもって課税年度の異なる平成22年度の台帳価格とみなして本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額とすることはできない。
 したがって、この点についての請求人の主張には理由がない。
(4)本件通知処分について
 本件登記の時における課税標準たる本件土地の価額は、上記(3)のイの(ロ)のとおり、○○○○円となるから、課税標準の額は○○○○円(国税通則法第118条《国税の課税標準の端数計算等》第1項の規定に基づき1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額)となり,本件登記の申請に係る登録免許税の額は、課税標準の額に登録免許税法第9条《課税標準及び税率》及び租税特別措置法第72条《土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減》第1項第1号の規定による1,000分の10の割合を乗じた○○○○円(国税通則法第119条《国税の確定金額の端数計算等》第1項の規定に基づき100円未満の端数金額を切捨てた後の金額)となる。
 そうすると、本件登記の時における登録免許税の額○○○○円は、請求人が既に納付した登録免許税の額○○○○円を下回るから、本件通知処分は、課税標準の額○○○○円及び登録免許税の額○○○○円を超える部分につき取り消されるべきである。 
(5)その他
 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。

別表1 本件土地の平成23年度の台帳価格に対する決定(省略)
別表2 本件土地の近隣地域における取引事例(省略)
別表3 本件請求人所有地に係る意見書の概要(省略)
別表3の付表 時点修正率の算出(省略)
別表4 本件土地の価額の審判所認定額(省略)
別表4の付表1 本件画地の価額の算出(省略)
別表4の付表2 取付道路の取得費の算出(省略)
別紙2 利用可能な画地及び取付道路の概略(想定)図(省略)
別紙1 本件請求人所有地及び本件土地の概略図


 

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