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《書 誌》
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【文献番号】 25500886
【文献種別】 判決/東京高等裁判所(控訴審)
【裁判年月日】 平成22年 1月27日
【事件名】 各重加算税等賦課決定処分取消請求控訴事件
【審級関係】 第一審 25500721
横浜地方裁判所 
平成21年 8月26日 判決
【事案の概要】 運送業を営む控訴人(原告)が、所有する車両の修理を訴外会社に行わせたとして、修理に係る費用を修繕費として損金の額に算入して法人税及び消費税等の各確定申告をしたところ、神奈川税務署長が、控訴人自らが当該修理を行ったにもかかわらず、これを訴外会社が行ったように事実を仮装したと認められるとして、控訴人に対し、国税通則法68条1項に基づき、法人税、消費税等の各重加算税賦課決定処分をしたことから、控訴人が、被控訴人(第1事件被告・国)に対し、各処分の取消しを求め(第1事件)、神奈川県神奈川県税事務所長が、控訴人が事実を仮装したとの鶴見税務署長の認定に依拠して、控訴人に対し、地方税法72条の47第1項に基づき、法人事業税の重加算金決定処分をしたことから、控訴人が、独自の税務調査をすることなく国の税務官署の調査結果を無条件に援用して行われた同処分は違法であると主張し、被控訴人(第2事件被告・県)に対し、同処分の取消しを求めた(第2事件)事案の控訴審において、第1事件においては、国処分行政庁の本件各重加算税賦課決定に違法性は認められないし、第2事件においては、県処分行政庁がした国処分行政庁の認定を援用して本件重加算税決定を行ったことが違法であると解することはできないとして、控訴を棄却した事例。
【判示事項】 〔TKC税務研究所〕
  1. 重加算税の賦課要件。
(要旨文献番号:60059685)
  2. 期末における経理処理が、国税通則法68条1項にいう「仮装」に当たるとした事例。
(要旨文献番号:60059686)
  3. 修正申告は会社代表者の意思に基づくものであり、無効でないとした事例。
(要旨文献番号:60059687)
  4. 県の処分行政庁が税務官署の認定を援用して行った、重加算金決定は適法であるとした事例。
(要旨文献番号:60059688)
【裁判結果】 棄却
【上訴等】 確定
【裁判官】 藤村啓 坂本宗一 大濱寿美
【掲載文献】 税務訴訟資料260号順号11371
【参照法令】 国税通則法68条
地方税法72条の7
地方税法72条の14
【全文容量】 約4Kバイト(A4印刷:約4枚)




 《全 文》

【文献番号】25500886  

各重加算税等賦課決定処分取消請求控訴事件
東京高等裁判所平成●●年(○○)第●●号
平成22年1月27日第15民事部判決

       判   決

控訴人(原審第1・第2事件原告) A株式会社
同代表者代表取締役 甲
同訴訟代理人弁護士 堀沢茂
被控訴人(原審第1事件被告) 国
同代表者法務大臣 千葉景子
同処分行政庁 神奈川税務署長事務承継者 鶴見税務署長
同指定代理人 吉田俊介
同 雨宮恒夫
同 櫻井光照
同 鵜澤和義
同 田中力
被控訴人(原審第2事件被告) 神奈川県
同代表者知事 松沢成文
同処分行政庁 神奈川県神奈川県税事務所長
同指定代理人 海老原隆
同 渡辺大
同 渡邊太郎
同 岡部学


       主   文

本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。


       事実及び理由

第1 当事者の求める裁判
1 控訴の趣旨
(1)原判決を取り消す。
(2)神奈川税務署長が、控訴人に対し、平成16年10月29日付けでした法人税に係る重加算税賦課決定処分を取り消す。
(3)神奈川税務署長が、控訴人に対し、平成16年10月29日付けでした消費税及び地方消費税に係る重加算税賦課決定処分を取り消す。
(4)神奈川県神奈川県税事務所長が、控訴人に対し、平成17年1月5日付けでした法人事業税に係る重加算金決定処分を取り消す。
(5)訴訟費用は第1、2審とも被控訴人らの負担とする。
2 控訴の趣旨に対する被控訴人らの答弁
 主文同旨
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件第1事件は、控訴人が、神奈川税務署長が平成16年10月29日付けでした、平成15年4月1日から平成16年3月31日までの事業年度の法人税に係る重加算税賦課決定処分、及び同時期の課税期間の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)に係る重加算税の賦課決定処分(以下「本件各重加算税賦課決定処分」という。)は、控訴人が同時期に訴外B株式会社(以下「B」という。)に行わせた車両修理費に関し仮装したところに基づき納税申告したという誤った認識に基づくものであって違法であるとして、その取消しを求める事案である。なお、控訴人が平成17年11月1日に本店を横浜市○○区から同市××区に移転したため、神奈川税務署長の事務は鶴見税務署長(第1事件処分行政庁(以下「国処分行政庁」という。))に承継された。
 本件第2事件は、控訴人が、神奈川県神奈川県税事務所長(第2事件処分行政庁(以下「県処分行政庁]という。))が平成17年1月5日付けで、前記の国処分行政庁の誤った認識に依拠してした上記時期の事業年度の法人事業税に係る重加算金決定処分は、前記のとおり根拠を欠くものである点のほかにも、自らの調査を怠り国の税務官署の認定を無条件に援用して行ったという点において違法であるとして、その取消しを求める事案である。
2 基礎となる事実、争点及び当事者の主張
 標記の点は、原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の3、「第3 争点」及び「第4 争点に関する当事者の主張」の1ないし3(原判決4ページ14行目から26ページ8行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する(ただし、10ページ5行目の「平成16年12月24日」を「平成17年4月19日」に改める。)。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないと考える。その理由は、おおむね原判決の「事実及び理由」中の「第5 当裁判所の判断」の1ないし3(26ページ10行目から43ページ17行目まで)に記載のとおりであるからこれを引用する。
2 控訴人は、当審においても各処分の違法性についてるる主張し、原審の事実認定は誤っていると述べる。
 しかしながら、その主張を踏まえ改めて取調済みの証拠を精査検討しても、本件第1事件においては、石油製品類の販売及び石油類の輸送等を業とする控訴人が、その所有する車両の修理等をそのために雇用した乙に行わせているにもかかわらず、これをB(控訴人代表者が設立した会社であり、代表者は、登記簿上等では控訴人代表者の子Lであるが、実質的には控訴人代表者であり、また本件当時である平成16年には両社の事務所、車両修理工場、応接室等は3階建ての同一建物内にあった。)に修理委託したことにして架空の修繕費を計上して損金の額に算入するなどし、所得金額を63万5959円、差引所得に対する法人税額を13万9000円、消費税額を617万2600円、地方消費税額を154万3100円とする法人税及び消費税等の確定申告書を提出して法人税及び消費税等を免れようとした(その後の修正結果によれば,所得金額は2499万2999円、差引所得に対する法人税額は701万6000円、消費税額は766万5500円、地方消費税額は191万6300円であった。)という事実が認められ、国処分行政庁の本件各重加算税賦課決定に違法性は認められないし、本件第2事件においては、県処分行政庁がした国処分行政庁の認定を援用して本件重加算税決定を行ったことが違法であると解することはできず、したがって原審の認定判断に結論を覆さなければならないような誤りがあるということはできない。
3 よって、以上と同旨の原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 
東京高等裁判所第15民事部
裁判長裁判官 藤村啓 裁判官 坂本宗一 裁判官 大濱寿美


 

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