《書 誌》
提供 TKC
【文献番号】
25503554
【文献種別】
判決/東京高等裁判所(控訴審)
【裁判年月日】
平成24年 9月12日
【事件名】
処分取消請求控訴事件
【審級関係】
第一審
25493499
東京地方裁判所 平成23年(行ウ)第284号
平成24年 4月18日 判決
上告審
25506358
最高裁判所第一小法廷
平成25年 3月21日 決定
【判示事項】
〔TKC税務研究所〕
相続税法32条1号及び6号による更正の請求が、遺産分割審判の高裁決定が告知された日の翌日から4月経過後にされたものであり、不適法とされた事例。
(要旨文献番号:60065657)
【裁判結果】
棄却
【上訴等】
上告
【裁判官】
井上繁規 笠井勝彦 宮永忠明
【掲載文献】
税務訴訟資料262号順号12033
【参照法令】
相続税法32条
民事訴訟法336条
民事訴訟法327条
民事訴訟法116条
民事訴訟法337条
家事審判法13条
【全文容量】
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《全 文》
【文献番号】
25503554
処分取消請求控訴事件
東京高等裁判所平成●●年(○○)第●●号
平成24年9月12日第15民事部判決
判 決
控訴人 乙(以下「控訴人乙」という。)
控訴人 甲(以下「控訴人甲」という。)
被控訴人 国
同代表者法務大臣 滝実
処分行政庁 武蔵府中税務署長 北澤哲
同指定代理人 長谷川健太郎
同 山口克也
同 箕浦裕幸
同 峰岡睦久
同 北村勝
同 中澤直人
主 文
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨(控訴人乙につき陳述擬制)
1 原判決を取り消す。
2 武蔵府中税務署長が控訴人乙に対して平成21年6月30日付けでした控訴人乙の平成12年7月27日相続開始に係る相続税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
3 武蔵府中税務署長が控訴人甲に対して平成21年6月30日付けでした控訴人甲の平成12年7月27日相続開始に係る相続税の更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
第2 事案の概要
1(1)本件は、丙(以下「亡丙」という。)が平成12年7月27日に死亡したことによって開始した相続(以下「本件相続」という。)により財産を取得した控訴人乙(亡丙の妻)及び控訴人甲(亡丙の長女)が、本件相続に係る相続税について更正をする処分を受けた後に本件相続に係る財産の分割が行われたところ、相続税法(平成15年法律第8号による改正前のものをいう。以下同じ。)19条の2第1項が定める配偶者に対する相続税額の軽減又は租税特別措置法(平成13年法律第7号による改正前のものをいう。以下同じ。)69条の4第1項が定める小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けることができるとして、それぞれ更正の請求(以下、控訴人乙の請求を「本件乙更正請求」、控訴人甲の請求を「本件甲更正請求」といい、併せて、「本件各更正請求」という。)をしたのに対して、武蔵府中税務署長がした更正をすべき理由がない旨の各通知処分(前記第1の2及び3記載の各通知処分。以下、併せて「本件各通知処分」という。)の取消しを求める事案である。
(2)本件の争点は、本件各更正請求が相続税法32条所定の更正の請求の期間内にされたものか否かであり、関係法令の定め、前提となる事実及び争点に対する当事者の主張は、後記3のとおり当審における控訴人らの主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要等」の1ないし3に記載のとおりであるから、これを引用する。
2 原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したので、控訴人らは、これを不服として本件控訴を提起した。
3 当審における控訴人らの主張(控訴人甲は下記(1)ないし(3)のとおり陳述し、控訴人乙は下記(1)及び(2)を記載した控訴理由書の陳述が擬制された。)
(1)本件各通知処分には、本件各更正請求が更正の請求の期間を経過してされたものであるとの記載はない。
(2)控訴人らは、裁判書の送達を受けてから4月以内に更正の請求をすればよいと考えており、武蔵府中税務署の職員も電話で同旨を述べていた。
(3)ア 控訴人らは、平成21年1月6日又は7日頃、武蔵府中税務署に電話をして、男性職員から、同月8日までに更正請求をすればよいと教示されたので、同月8日に本件各更正請求をした。
イ 控訴人らは、平成15年6月末から7月初め頃、国税庁又は国税局の職員に電話をして、更正請求は遺産分割審判の最終的な決定がされてから4月以内にすればよいと教示されていた。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,後記2のとおり当審における控訴人らの主張に対する判断を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりである(ただし、原判決9頁8行目の「決定」を「抗告を棄却する旨の決定」に、18行目の「同年」を「平成20年」にそれぞれ改める。)から、これを引用する。
2 当審における控訴人らの主張に対する判断
(1)控訴人らの前記第2の3(1)の主張は、本件各通知処分に本件各更正請求が更正の請求の期間を経過してされたものであるとの記載がないことによって本件各通知処分が違法となり、取り消されるべきである旨を主張するものと解される。
しかし、本件各通知処分は、控訴人らの本件各更正請求に対し、いずれも更正をすべき理由がない旨を通知したものであるところ(乙11の1・2、引用に係る原判決の「第2 事案の概要等」中の2(10))、引用に係る原判決の「第3 当裁判所の判断」中の1に説示のとおり、本件各更正請求はいずれも相続税法32条所定の期間を経過した後にされたものであって、本件各更正請求についてはいずれも更正をすべき理由のないことが明らかであるから、本件各通知処分に取り消されるべき違法はない。
したがって、控訴人らの上記主張は、採用することができない。
(2)控訴人らの上記第2の3(2)及び(3)の主張は、控訴人らに対する武蔵府中税務署及び国税庁又は国税局の各職員の教示により、控訴人らは平成20年9月8日の本件最高裁決定から4月以内であれば更正の請求をすることができると理解し、平成21年1月8日に本件各更正請求をしたのであるから、本件各通知処分は違法であり、取り消されるべきである旨を主張するものと解される。
しかし、前記各職員が、控訴人らに対し、控訴人らの主張するような教示をしたことを認めるに足りる証拠はない。なお、控訴人らは、異議調査において、本件各更正請求に至った経緯等を述べているが(甲1)、平成21年1月6日又は7日頃に武蔵府中税務署の職員から教示を受けたこと及び平成15年6月末から7月初め頃に国税庁又は国税局の職員から教示を受けたことを述べた形跡はなく、また、国税不服審判所からの「回答書の提出について」(甲2)により、本件各更正請求が更正の請求をすることができる期間を経過した後にされていることについて書面による回答を求められた際も、上記主張に係る教示を受けた旨を述べた形跡もない(甲3)。
したがって、控訴人らの上記主張は、採用することができない。
3 結論
よって、控訴人らの請求はいずれも理由がないから棄却すべきであって、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第15民事部
裁判長裁判官 井上繁規 裁判官 笠井勝彦 裁判官 宮永忠明
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