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《書 誌》
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【文献番号】 25503525
【文献種別】 判決/大阪高等裁判所(控訴審)
【裁判年月日】 平成24年 7月 5日
【事件名】 更正処分取消請求控訴事件
【審級関係】 第一審 25501995
神戸地方裁判所 
平成23年11月11日 判決
上告審 25506375
最高裁判所第二小法廷 
平成25年 4月19日 決定
【判示事項】 〔TKC税務研究所〕
  1. 所得税法152条において、「当該事実が生じた日」の記載が要求されている趣旨。
(要旨文献番号:60065592)
  2. 所得税法152条所定の「当該事実の生じた日」の記載がないから、同条の更正の請求には当たらないとした事例。
(要旨文献番号:60065593)
  3. 消費税法56条1項に基づく更正の請求に該当しないとした事例。
(要旨文献番号:60065594)
  4. 消費税の額の計算において、貸倒れに係る消費税額を控除することはできないとした事例。
(要旨文献番号:60065595)
  5. 国税通則法23条1項による更正の請求ができる期間は、同条2項に定める事由に基づく更正の請求ができる場合を含んでいるか(積極)。
(要旨文献番号:60065596)
  6. 所得税法152条により更正の請求をすることができる場合における、国税通則法23条1項との適用関係。
(要旨文献番号:60065597)
【裁判結果】 棄却
【上訴等】 上告
【裁判官】 矢延正平 泉薫 内野宗揮
【掲載文献】 税務訴訟資料262号順号11989
【参照法令】 所得税法152条
消費税法39条
消費税法52条
国税通則法23条
消費税法56条
消費税法施行令59条
消費税法施行規則18条
所得税法63条
【全文容量】 約18Kバイト(A4印刷:約11枚)




 《全 文》

【文献番号】25503525  

更正処分取消請求控訴事件
大阪高等裁判所平成●●年(○○)第●●号
平成24年7月5日第7民事部判決

       判   決

控訴人 甲
同訴訟代理人弁護士 堺充廣
同訴訟復代理人弁護士 岸田洋一
被控訴人 国
同代表者法務大臣 滝実
処分行政庁 兵庫税務署長 松村克徳
被控訴人指定代理人 梅本大介
同 松本淳
同 小宮山真佐路
同 山岡啓二
同 雨嶋通明


       主   文

1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。


       事実及び理由

第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 兵庫税務署長が平成19年4月11日付けで控訴人に対してした控訴人の平成17年分の所得税に係る更正処分(平成20年9月26日付け裁決で一部取り消された後のもの)のうち総所得額1278万5669円、納付すべき税額0円を超える部分を取り消す。
3 兵庫税務署長が平成19年4月11日付けで控訴人に対してした控訴人の平成17年1月1日から同年12月31日までの課税期間の消費税及び地方消費税に係る更正処分(平成20年9月26日付け裁決で一部取り消された後のもの)のうち納付すべき消費税額244万8800円、納付すべき地方消費税額61万2200円を超える部分を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は、税理士業を営んでいた控訴人が、処分行政庁に対し、控訴人の平成17年分の所得税(以下「本件所得税」という。)及び同年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下、これを「平成17年課税期間」といい、他の年における同様の課税期間も同様に表記する。)の消費税及び地方消費税(以下、これらを併せて「消費税等」といい、平成17年課税期間の消費税等を「本件消費税等」という。)についてそれぞれ更正の請求をしたところ、処分行政庁が、各更正の請求の一部について控訴人の請求を認めたが、その余の請求を認めない旨の各更正処分をしたことから、同処分には、控訴人の事業所得に係る必要経費などを適切に算入していない違法事由があるなどと主張して、当該各更正処分の取消しを求める事案である。
 原審は、控訴人の各請求をいずれも棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴した。
1 関係法令、前提事実、争点、当事者の主張は、下記(1)ないし(8)のとおり補正し、後記2のとおり付加するほかは、原判決「事実及び理由」第2の1ないし4のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決2頁23行目末尾に「(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)」を加える。
(2)原判決5頁21行目「(以下「通則法」という。)23条1項」を「(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下「通則法」という。)」に改め、同行目末尾に改行のうえ、次を加える。
「ア 通則法23条1項」
(3)原判決6頁3行目末尾に改行のうえ、次を加える。
「イ 通則法23条2項
 納税申告書を提出した者又は…は、次の各号の一に該当する場合(納税申告書を提出した者については、当該各号に掲げる期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に掲げる期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求…をすることができる。
一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。 その確定した日の翌日から起算して2月以内
二 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たつてその申告をし、又は決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があつたとき。 当該更正又は決定があつた日の翌日から起算して2月以内
三 その他当該国税の法定申告期限後に生じた前二号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき。 当該理由が生じた日の翌日から起算して2月以内
(6)国税通則法施行令第6条1項(平成18年3月31日政令第132号による改正前のもの)
 通則法第23条第2項第3号(更正の請求)に規定する政令で定めるやむを得ない理由は、次に掲げる理由とする。
一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等…又は税額等…の計算の基礎となつた事実のうちに含まれていた行為の効力に係る官公署の許可その他の処分が取り消されたこと。
二 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に係る契約が、解除権の行使によつて解除され、若しくは当該契約の成立後生じたやむを得ない事情によつて解除され、又は取り消されたこと。
三 帳簿書類の押収その他やむを得ない事情により、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき帳簿書類その他の記録に基づいて国税の課税標準等又は税額等を計算することができなかつた場合において、その後、当該事情が消滅したこと。
四 わが国が締結した所得に対する租税に関する二重課税の回避又は脱税の防止のための条約に規定する権限のある当局間の協議により、その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等に関し、その内容と異なる内容の合意が行なわれたこと。」
(4)原判決7頁7行目「(以下、」から同頁9行目「という。)」までを削除する。
(5)原判決7頁10行目、13行目、17行目及び19行目の各「本件各更正処分」をいずれも「上記エの各更正処分」に改める。
(6)原判決7頁11行目「異議申立て」を「各異議申立て」に改める。
(7)原判決7頁16行目「上記各審査請求」を「本件審査請求」に改める。
(8)原判決7頁19行目「(上記裁決により」から同頁22行目「後のものをいう。)」までを「のうち本件裁決による一部取消後のもの、すなわち、本件所得税更正請求に対する更正処分のうち本件裁決による一部取消後のもの(以下「本件所得税更正処分」という。)及び本件消費税等更正請求に対する更正処分のうち本件裁決による一部取消後のもの(以下「本件消費税等更正処分」といい、本件所得税更正処分と本件消費税等更正処分とを併せて「本件各更正処分」という。)」に改める。
2 当審における補充主張
(控訴人)
(1)争点1について
ア 控訴人は、本件所得税更正請求は通則法23条1項の理由に基づく更正の請求は含まないと主張しているが、更正の請求の手続は、同項に基づくものではないとは主張していない。更正の理由となるべき後発的理由が法定申告期限から1年以内に生じた場合には、同項の通常の更正の請求が認められる(同条2項柱書かっこ書)。控訴人は、実体面においては所得税法63条、152条の後発的理由に基づき、手続面では通則法23条2項柱書かっこ書に基づき、同条1項による更正の請求をしている。そして、同項に基づいた更正の請求の場合、後発的な「当該事実が生じた日」について、その請求書への記載は、不要である。
イ(ア)所得税法152条、63条による更正の請求としても、控訴人が本件各更正処分の違法を知った平成18年8月ころをもって変更事由が生じた日とすべきである。
(イ)本件過年分売掛金は、実体的には、存在しないが、被控訴人の誤った認定に基づいて存在するものであるから、その発生した時期は、平成17年11月27日付修正申告がされた同日である。そして所得税法152条の「当該事実が生じた日」は、存在しないが、あえて主張するのであれば、平成18年5月である。
(2)争点2ないし6について
ア 本件過年分売掛金は、被控訴人が誤った認定をしたために存在することとなったものであり、これを是正する方法は、その貸倒れを主張するほかない。本件過年分売掛金に関する上記1で引用に係る原判決第2の4(3)【原告の主張】には、十分な合理性がある。
イ 乙に対する本件未払給与について、処分行政庁は、平成13年分ないし平成15年分の確定申告に係る査察調査において支払債務は不存在との誤った認定を行っているが、当該債務は、乙との関係において実在する。損失の事実の発生日は、上記誤った認定を行った日であり、実際に支払われることとなった時点の平成17年分の必要経費に算入されるべきことは当然である。
ウ 什器備品の廃棄損については、処分行政庁は、本件オフコンに係る減価償却を認めているのであるから、本件オフコンは存在する。これを控訴人から引き継いだUが廃棄したのであるから、平成17年分の必要経費に算入されるべきである。
(3)争点7について
ア C
 控訴人は、Cの顧問税理士を務め、その経営状況を把握してきたところ、そのCから会社が消滅したので控訴人に対する税理士報酬等の支払ができない旨の通知を受け、Cが消滅したと判断したものであり、控訴人作成のC宛の平成19年12月20日付書面(甲16の〔イ〕1枚目)にはその趣旨を記載しているものであって、その記載の信用性は極めて高い。したがって、Cは消滅したものである。また、廃業後は、課税対象となった売掛金は資産として存続していないこととなるし、取立も行われることはあり得なくなるほか、現在では個人情報保護の観点から第三者が取引先に係る情報を入手することは困難であることに鑑みれば、貸倒れの認定に厳格な立証を求めるべきではない。
イ F
 控訴人は、Fの顧問税理士を務め、その経営状況を把握してきたところ、そのFから景気が悪くなったこと等を記載した平成20年4月18日付け消印の押された封筒在中の書面(甲16の〔ロ〕5枚目ないし7枚目)が送付されてきたのであるから、Fに対する売掛金が回収不能になったと認められる。また、上記アと同様、貸倒れと認定するために厳格な立証を求めるべきではない。
ウ 本件過年分売掛金のうち、丙に対するものは取引を停止した後1年以上経過した平成17年末に、Eに対するものは同社が廃業した平成16年8月に,Kに対するものは同社が消滅し、かつ取引を停止した後1年以上経過した平成17年中に、有限会社Tに対するものは同社が消滅し、かつ取引を停止した後1年以上経過した平成17年度に、それぞれ回収不能となった。
エ L及びMに対する平成17年分の売掛金については、平成17年中には取引を停止した後1年以上経過しているから、平成17年度に回収不能となった。Nに対する平成17年分の売掛金については、控訴人はその顧問税理士を務め、その経営状況を把握してきたこと、上記アと同様、貸倒れと認定するために厳格な立証を求めるべきではないことに鑑みれば、取引を停止した後1年以上経過したことにより、平成17年度に回収不能となった。丁に対する平成17年分の売掛金については、控訴人は、丁から、平成18年11月30日付け書面(甲16の〔ヘ〕3枚目)等で事業を廃止して支払能力ないこと等を通知されたこと、上記アと同様、貸倒れと認定するために厳格な立証を求めるべきではないことに鑑みれば、丁の事業の廃止により回収不能となった。 
(被控訴人)
(1)争点1について
ア 本件所得税更正請求は、所得税法152条の要件を満たさない結果、同法63条に基づく主張はできないことになるところ、控訴人が主張する本件所得税更正処分の違法事由として主張する事由は、いずれも同条に基づくものである。したがって、本件各更正請求に対する本件各更正処分の違法をいう控訴人の主張はいずれも理由がない。
イ 所得税法152条の文言上、同条に基づく請求を通則法23条2項柱書かっこ書に基づく請求と解する余地はない。同項が規定する更正の請求の後発的事由の多くは、事業所得にかかる所得税に適用されない。このことからも、所得税法152条に基づく更正の請求に通則法23条2項の適用があることを前提とする控訴人の主張は誤りである。
 なお、仮に、本件所得税更正請求が所得税法152条に基づくものとしても、控訴人の主張は成り立たない。
(2)争点7について
 控訴人の主張は、否認ないし争う。
 控訴人は、貸倒れの立証について厳格な立証を求めるべきでないと主張するが、失当である。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も控訴人の請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断する。その理由は、下記(1)ないし(5)のとおり補正し、後記2のとおり追加するほかは、原判決「事実及び理由」第3のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決28頁1行目「に基づく主張は」を「に基づくものとして更正の請求をすることが」に、同頁3行目「結局、かかる」を「本件所得税更正処分が、当該事由につき本件所得税更正請求による更正を認めなかったことについて、その違法をいう」に改める。
(2)原判決32頁21行目「ありません」の次に「と申し述べました。」を加える。
(3)原判決33頁5行目、16行目、24行目及び36頁17行目の各「及59条び」をいずれも「59条及び」に改める。
(4)原判決33頁18行目「貸倒損失」を「貸倒れに係る消費税額」に改める。
(5)原判決36頁12行目「行えなくなった」の次に「原因やその時期など具体的な」を加え、19行目「を本件消費税等の」を「に係る消費税額を本件消費税等の消費税」に改める。
2 当審における補充主張について
(1)控訴人は、上記第2の2(控訴人)(1)アのとおり、本件所得税更正請求は、実体面においては所得税法63条、152条の後発的理由に基づき、手続面では通則法23条2項柱書かっこ書に基づき、同条1項による更正の請求をするものである旨主張する。
 通則法23条2項柱書かっこ書は、「納税申告書を提出した者については、当該各号に掲げる期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。」と定め、同項による更正の請求のできる期間の満了する日が同条1項の更正の請求ができる期間の満了する日よりも後でなければ、同条2項による更正の請求を認めないとしているところ、これは、同条1項の期間内であれば、同項による更正の請求が認められることによるものと解するのが相当であるところ、このことからすれば、同項による更正の請求ができる期間は、同条2項に定める事由に基づく更正の請求ができる場合を含んでいるものと解される。
 しかし、所得税法152条は、所得税に関し、申告後に同法63条等に定める事実が生じたことにより通則法23条1項各号の事由が生じた場合について、一定の要件のもと更正の請求をすることができる旨定めるものであるところ、それらの場合と収益と費用を期間的に対応させて計算する事業所得に係る所得税を念頭に同条2項が更正の請求をすることができるものとしている場合とでは、申告後に一定の事由が発生した場面であるということ以外に共通性や類似性は見いだしがたいことに加えて、所得税法152条は通則法23条1項に基づく更正の請求の特則であると解され、同条2項柱書かっこ書のような定めを有しないことに鑑みれば、上記のとおり同条1項が一定の範囲で同条2項に定める事由に基づく更正の請求をすることができる場合を含んでいるものと解されるとしても、そのことから直ちに、同条1項の期間内において、所得税法152条により更正の請求をすることができるものとする場合について、同条の適用を排除したうえで、もっぱら通則法23条1項の定める手続に従って所得税に係る更正の請求をすることができる旨定めるものと解することはできないし、同条2項柱書かっこ書が、所得税法152条により更正の請求をすることができるものとする場合について適用があるものと解することはできない。
 したがって、上記控訴人の主張は、採用することができず、本件所得税更正請求に対する本件所得税更正処分が違法なものであると認めることはできない。
(2)控訴人は、上記第2の2(控訴人)(1)イ(ア)のとおり、所得税法152条、63条による更正の請求としても、控訴人が本件各更正処分の違法を知った平成18年8月ころをもって変更事由が生じた日とすべきである旨主張するが、所得税法152条、63条及び通則法23条1項の各文言に照らし、控訴人主張のとおりに解するのは困難である。
 また、控訴人は、上記第2の2(控訴人)(1)イ(イ)のとおり、本件過年分売掛金について、所得税法152条が所得税について更正の請求をすることができるとする「当該事実が生じた日」は存在せず、あえて主張するのであれば平成18年5月である旨主張する。しかし、上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1(1)のとおり、本件所得税更正請求の請求書において所得税法152条にいう「当該事実が生じた日」の記載はなかったのであり、また、平成18年5月ころとの記載があったものと評価するべき事情があったことを認めるに足りる証拠もない。上記主張が所得税法152条の「当該事実が生じた日」を更正の請求書に記載しなくても、同条に基づく更正の請求に当たると解すべきとする趣旨であるとしても、所得税法152条についてそのような解釈をとることが困難であることは、上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1(2)イのとおりである。
 したがって、上記控訴人の主張は、採用することができない。
(3)控訴人は、上記第2の2(控訴人)(2)のとおり、争点2ないし6に関し、上記本件過年分売掛金、乙に対する本件未払給与、什器備品の廃棄損について更正の請求が認められるべきものと主張する。
 しかし、上記控訴人の主張は、上記第2の2(控訴人)(1)アのとおり、本件所得税更正請求は、実体面においては所得税法63条、152条の後発的理由に基づき、手続面では通則法23条2項柱書かっこ書に基づき、同条1項による更正の請求をするものである旨の主張を前提とするものと解されるところ、この前提が認められないことは、上記(1)のとおりである。そうだとすれば、上記控訴人の主張について判断するまでもなく、本件所得税更正請求に対する本件所得税更正処分を違法なものであるということはできない。
(4)控訴人は、上記第2の2(控訴人)(3)アのとおり、Cが消滅していたものである旨主張する。
 しかし、上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3(ただし、補正後のもの。以下同じ。)の3(1)ウ(イ)bのとおり、Cが消滅したものと認めるには足りず、他に、これを認めるに足りる証拠は見当たらない。また、控訴人は、Cの貸倒れの事実について厳格な立証を求めるべきではない旨主張するが、その指摘するところを踏まえても、当該主張を採用することは困難である。
 したがって、上記控訴人の主張を踏まえても、Cに対する本件過年分売掛金につき、施行令59条等所定の事実が生じたことを認めることができないとする上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3(1)ウ(イ)bの判断を左右するには足りない。
(5)控訴人は、上記第2の2(控訴人)(3)イのとおり、平成20年4月18日付け消印の押された封筒在中の書面(甲16の〔ロ〕5枚目ないし7枚目)等を指摘し、Fに対する売掛金が回収不能になった旨主張する。
 しかし、上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3(1)ウ(ウ)bのとおり、Fに対し貸倒れの対象となる債権を有していたことを認めるに足りる証拠は見当たらないほか、控訴人との取引が終了した経緯についても、具体的に認定するに足りる証拠は見当たらない。また、控訴人は、Fへの貸倒れの事実についても厳格な立証を求めるべきではない旨主張するが、その指摘するところを踏まえても、当該主張を採用することは困難である。
 したがって、上記控訴人の主張を踏まえても、Fに対する本件過年分売掛金につき、施行令59条等所定の事実が生じたことを認めることができないとする上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3(1)ウ(ウ)bの判断を左右するには足りない。
(6)控訴人は、上記第2の2(控訴人)(3)ウのとおり、本件過年分売掛金のうち、丙、E、Kに対するものについて、平成16年8月ないし平成17年末までにそれぞれ回収不能となった旨主張するが、これらとの取引関係について客観的な証拠は見当たらず、当該主張を裏付けるに足りる的確な証拠はない。これらの取引先について消費税法39条1項、施行令59条及び施行規則18条に定める要件に該当する事実が認められないとした上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3(1)ウ(エ)、エの判断を左右するに足りる事由は見当たらない。
 また、控訴人は、上記第2の2(控訴人)(3)ウのとおり、本件過年分売掛金には有限会社Tに係る平成13年度ないし平成15年度に係る売掛金が含まれていることを前提として、これについて同社が消滅した等により平成17年度に回収不能になった旨主張するが、当該主張についてもこれを裏付けるに足りる証拠はない。当該控訴人の主張は採用することができない。
(7)控訴人は、上記第2の2(控訴人)(3)エのとおり、本件貸倒損失に関し、L及びM並びにNに対する平成17年分の売掛金については、平成17年度に回収不能になった旨主張するが、L及びM並びにNの資産の状況等について具体的に認定するに足りる証拠はないものというほかなく、上記控訴人の主張を踏まえても、L及びM並びにNに対する債権について施行令59条等所定の事実が生じたことを認めることができないとした上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3(2)イ(イ)a及び同ウ(イ)の判断を左右するには足りない。
 また、控訴人は、上記第2の2(控訴人)(3)エのとおり、丁から事業を廃止した等の通知を受けたから、平成17年分の売掛金について回収不能になった旨主張するが、控訴人が引用する平成18年11月30日付け書面(甲16の〔ヘ〕3枚目)の内容には事業を廃止した事実について記載はなく、また、丁からの平成19年12月20日付け書面(甲16の〔ヘ〕1枚目)によっても、事業を廃止した時期について具体的な記載はなく、上記各書面には、丁において支払ができなくなった事情について具体的な記載はない。このような証拠関係に照らすと、上記控訴人の主張を踏まえても、丁に対する平成17年課税期間の売上について振り出された小切手債権について、施行令59条等所定の事実が生じたことを認めることができないとした上記1で引用に係る原判決「事実及び理由」第3の3(2)エ(イ)の判断を左右するには足りない。
 さらに、控訴人は、N及び丁への貸倒れの事実についても厳格な立証を求めるべきではない旨主張するが、その指摘するところを踏まえても、当該主張を採用することは困難である。
(8)その他、控訴人の主張するところを検討しても、これまでの認定判断を左右するものはない。
第4 結論
 以上によれば、控訴人の請求にはいずれも理由がないから、これらを棄却した原判決は相当であって、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
大阪高等裁判所第7民事部
裁判長裁判官 矢延正平 裁判官 泉薫 裁判官 内野宗揮


 

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