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《書 誌》
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【文献番号】 25470935
【文献種別】 判決/名古屋地方裁判所(第一審)
【裁判年月日】 平成20年 9月29日
【事件番号】 平成19年(行ウ)第98号
【事件名】 所得税更正処分取消等請求事件
【事案の概要】 原告が、保証債務の履行のためにその所有する土地を売却したものの求償権を行使することができなくなったとして、所得税法64条2項の本件特例により、譲渡所得の計算上、その売却代金相当額をなかったものとするなどして所得税の確定申告をしたところ、本件特例の適用を否定されたうえ、更正処分等を受けたことから、その取消を求めた事案において、本件特例の適用を受けるためには、保証人が保証債務を履行したことが要件とされているところ、本件において、原告が保証債務を履行したものとは認められないが、原告が道路拡幅用地を取得することが上記売買契約の停止条件とされていたことなどに鑑みると、道路拡幅用地の購入費用は、客観的に見て土地譲渡を実現するために必要であったものと認められ、土地の譲渡費用に当たると認めるのが相当であるとされた事例。
【判示事項】 〔TKC税務研究所〕
  1. 借入金債務は、保証人でなく、債務者が所有不動産を売却して返済したものであるとして、所得税法64条2項の適用がないとした事例
(要旨文献番号:60054843)
  2. 資産の譲渡に当たって支出した費用が「資産の譲渡に要した費用」に当たるか否かの判断基準。
(要旨文献番号:60054844)
  3. 道路拡幅用地の取得が売買契約の停止条件とされていたとして、その購入費用が譲渡に要した費用に当たるとした事例。
(要旨文献番号:60054845)
【裁判結果】 一部認容、一部棄却
【上訴等】 確定
【裁判官】 松並重雄 前田郁勝 廣瀬達人
【掲載文献】 税務訴訟資料258号順号11039
【参照法令】 所得税法33条
所得税法64条
【引用判例】 (当判例が引用している判例等)
最高裁判所第一小法廷 平成15年(行ヒ)第217号
平成18年 4月20日
【全文容量】 約32Kバイト(A4印刷:約19枚)




 《全 文》

【文献番号】25470935  

所得税更正処分取消等請求事件
名古屋地方裁判所平成19年(行ウ)第98号
平成20年9月29日民事第9部判決

       判   決

原告 甲
同訴訟代理人弁護士 森田辰彦
被告 国
同代表者法務大臣 E
処分行政庁 刈谷税務署長 F
同指定代理人 G H J K


       主   文

1 処分行政庁が原告に対し平成18年3月6日付けでした平成16年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額668万4100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち66万8000円を超える部分を取り消す。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。


       事実及び理由

第1 請求
 処分行政庁が原告に対し平成18年3月6日付けでした平成16年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額410万2500円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち25万1000円を超える部分を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、保証債務の履行のためにその所有する土地を売却したものの求償権を行使することができなくなったとして、所得税法64条2項の規定(以下「本件特例」という。)により、譲渡所得の計算上、その売却代金相当額をなかったものとし、また、上記土地の売却に際して購入した道路用地の購入代金を同法33条3項の譲渡費用に当たるとして所得税の確定申告をしたのに対し、刈谷税務署長(処分行政庁)が、上記土地についての本件特例の適用及び道路用地の購入代金の譲渡費用該当性をいずれも否定して更正処分等をしたため、これらの処分が違法であると主張して、その一部取消しを求める事案である。
1 前提事実(争いがないか証拠上明白である。)
(1)原告は、昭和58年10月8日、有限会社A(以下「A」という。)の代表取締役に就任し、現在もその地位にある。なお、Aは、平成17年8月30日、刈谷税務署長に対し、平成16年10月31日で事業を廃止した旨の事業廃止届出書(消費税法57条1項3号)を提出した(ただし、解散の手続は採られていない。)。
(2)原告は、昭和58年8月2日、別紙物件目録記載1~4の各土地(以下、順に「本件土地1」~「本件土地4」といい、これらを併せて「本件各土地」という。)の所有権を相続により取得し、Aは、昭和49年4月5日、本件土地1、2の上に別紙物件目録記載5の建物(以下、その附属建物を併せて「本件建物」という。)を建築し、その後、その附属建物として工場、ポンプ室、事務所等を建築して、その所有権を取得した。
(3)原告は、平成4年9月30日、本件土地1、2につき、Aは、同日、本件建物につき、それぞれ根抵当権者をB信用金庫(以下「B信用金庫」という。)、債務者をAとする根抵当権(極度額1000万円の共同根抵当)を設定し、平成6年10月7日、同根抵当権の極度額を1億2000万円に変更した。
(4)Aは、平成7年2月17日以降、B信用金庫から金員を借り入れ、原告は、その保証人となった。AのB信用金庫からの借入残高は、平成16年11月25日当時、2987万5183円であった(以下、AのB信用金庫からの借入金を「本件借入金債務」という。)。
 また、Aは、原告から金員を借り入れ、その借入残高は、Aの平成16事業年度(平成16年7月1日~平成17年6月30日。以下「本件事業年度」という。)の期首において、3105万7286円であった。
 他方、原告は、平成10年8月31日、B信用金庫から金員を借り入れ、借入残高は、平成16年11月25日当時、3390万7525円であった。
(5)原告及びAは、平成16年9月18日、有限会社C(以下「C」という。)との間で、本件各土地及び本件建物について、次の内容の売買契約(以下「本件売買契約」といい、本件売買契約に係る契約書《乙4》を「本件売買契約書」という。)を締結した。
ア 売買代金は本件各土地の代金として5715万3600円、本件建物の代金として3500万円(消費税込み)の合計9215万3600円とする。
イ Cは本件売買契約成立と同時に手付金450万円を支払い、残額8765万3600円は引渡時に支払う。
ウ 本件各土地及び本件建物に対して賦課される公租・公課は、引渡日の前日までの分を売主、引渡日以降の分を買主の負担とし、引渡日において精算する。
 なお、本件売買契約に係る重要事項説明書(乙5)には、「本契約は、売主:甲が本物件土地の隣接地(所在地:刈谷市 所有者:乙)の一部分((別添付:分筆予定図朱示部分です。)を隣接地道路拡幅のため所有者:乙より平成16年10月末日までに買受けることを条件して効力が生じるものとし、当該期日までに、売主が買受けることが出来ない場合、効力を失うものと致します。」との記載(以下「本件確認条項」という。)がある。
(6)Cは、平成16年9月18日、原告及びAに対し、手付金450万円の支払のため小切手を交付し、原告は、同月21日、同小切手の取立てをB信用金庫刈谷北支店に委託し、原告の同支店の普通預金口座(口座番号 。以下「本件原告口座」という。)に450万円が入金された。
 また、Cは、同年11月25日、原告及びAに対し、8800万1942円(本件売買契約に基づく残代金8765万3600円と本件各土地の固定資産税等精算金34万8342円の合計額)を本件原告口座に振り込んで支払った。
(7)原告は、同日、本件原告口座からAのB信用金庫刈谷北支店の普通預金口座(口座番号 。以下「本件A口座」という。)に3500万円を振替入金した。
 Aは、同日、B信用金庫に対し、本件借入金債務の返済として、本件A口座から合計2987万9933円を支払い、B信用金庫は、同日、繰上げ返済に係る戻し利息として合計4750円を本件A口座に入金した。
 なお、原告は、同日、本件原告口座から原告のB信用金庫刈谷北支店の普通預金口座(口座番号 )に3391万円を振替入金した上、原告のB信用金庫からの借入金3390万7525円を返済した。
(8)原告は、平成16年9月10日、本件各土地に隣接する別紙物件目録記載6の土地(本件売買契約後に分筆されたもの。以下「本件道路拡幅用地」という。)の所有者である乙(以下「乙」という。)との間で、本件道路拡幅用地を50万円で購入する旨の売買契約を締結し、同日、乙に対し、手付金として5万円を支払った。同売買契約には、「買主は、売主より買受けた本物件を刈谷市へ『刈谷市の道路用地』として寄付することを絶対条件とする。」との特約が付された。乙は、同年10月22日、本件道路拡幅用地の分筆登記をし、原告は、同月29日、乙に対し残金45万円を支払い、同年11月5日、本件道路拡幅用地につき所有権移転登記を受けた。原告は、同年12月2日、本件道路拡幅用地を刈谷市に寄付し、同月7日、同市への所有権移転登記を了した(以下、これを「本件寄付」という。)。
(9)原告は、平成16年分の所得税につき、別紙「課税等経緯一覧」のとおり、平成17年3月15日、確定申告をしたところ、同年8月19日、刈谷税務署長から更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を受け、平成18年1月18日、修正申告をした。
 なお、原告は、上記修正申告において、本件各土地の実際の取得額が不明であるとして租税特別措置法31条の4第1項(措置法通達31の4-1)により、譲渡所得の金額の計算上、譲渡収入金額5741万6937円の100分の5に相当する287万0846円を本件各土地の取得費に計上し、本件借入金債務の返済としてB信用金庫に支払われた2987万5183円につき本件特例を適用し、本件道路拡幅用地の借入費用50万円につき譲渡費用に当たるとして、本件各土地に係る譲渡所得の算定においてこれらの金額を控除した。
(10)刈谷税務署長は、平成18年3月6日、原告の平成16年分の所得税につき、別紙「課税等経緯一覧」のとおり、更正及び過少申告加算税の賦課決定(以下、これらを併せて「本件各処分」という。)をした。なお、刈谷税務署長は、上記2987万5183円につき本件特例の適用を否定し、また、本件道路拡幅用地の購入費用は譲渡費用と認められないとした。
 原告は、本件各処分を不服として、平成18年4月6日、刈谷税務署長に対して異議申立てをしたところ、刈谷税務署長は、同年6月15日、これを棄却する旨の決定をした。原告は、さらに、同年7月12日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成19年6月27日付けでこれを棄却する旨の裁決をし、原告に通知した(なお、その具体的経緯等は別紙「課税等経緯一覧」記載のとおりである。)。
 原告は、平成19年12月11日、本件訴えを提起した。
2 各当事者の主張する税額等の算出根拠
(1)被告
ア 総所得金額 65万5722円
 上記金額は次の(ア)及び(イ)の合計金額である。
(ア)給与所得金額 0円
 上記金額は、原告が、修正申告書の「所得金額」の「給与」欄に記載した金額である。
(イ)雑所得金額 65万5722円
 上記金額は、原告が、平成16年中に社会保険庁から受領した老齢厚生年金137万4296円から、所得税法35条(雑所得)4項に規定する公的年金等控除額71万8574円を控除した金額である。
イ 分離長期譲渡所得の金額 5035万4449円
 上記金額は、次の(ア)から(イ)及び(ウ)を控除した金額である。
(ア)収入金額 5741万6937円
 上記金額は、原告が、修正申告書第三表の「収入金額」の「分離課税」の「長期譲渡」に係る「一般分」欄に記載した金額である。
(イ)取得費 287万0846円
 上記金額は、原告が、譲渡所得の内訳書3面の「〔2〕取得費」欄に記載した金額である。
(ウ)譲渡費用 419万1642円
 上記金額は、原告が譲渡所得の内訳書3面の「〔3〕譲渡費用」欄に記載した469万1642円から本件道路拡幅用地の購入費用50万円を控除した金額である。
ウ 所得から差し引かれる金額 226万1800円
 上記金額は、原告が、修正申告書の「所得から差し引かれる金額」欄に記載した金額である。
エ 課税される所得金額 4874万8000円
 上記金額は,所得税法87条2項及び租税特別措置法施行令21条8項の規定により、上記アから上記ウを控除し、控除し切れなかった残額を上記イから控除した金額(ただし、国税通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。 
オ 算出税額 731万2200円
 上記金額は、上記エの金額に、租税特別措置法31条1項の税率(税率100分の15)を乗じて算出した金額である。
カ 定率減税額 25万円
 上記金額は、経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律6条(平成17年度法律第21号による改正以前のもの)の規定に基づき、算出した金額である。
キ 源泉徴収税額 10万3070円
 上記金額は、上記ア(イ)の雑所得である老齢厚生年金にかかる源泉徴収税額である。
ク 納付すべき税額 695万9100円
 上記金額は、上記オの金額から上記カ及びキの各金額を控除した金額(ただし、国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後のもの)である。
(2)原告
ア 本税について
(ア)雑所得 65万5722円
 上記(1)ア(イ)に同じ。
(イ)分離長期譲渡所得の金額 3131万0606円
 上記(1)イから後述の1854万3843円と譲渡費用50万円を控除した金額。
(ウ)所得控除の額 226万1800円
 上記(1)ウに同じ。
(エ)課税分離長期譲渡所得金額 2970万4000円
 上記(ア)から(ウ)を控除し、控除し切れなかった残額を上記(イ)から控除した金額(1000円未満切捨て)。
(オ)上記(エ)に対する税額 445万5600円
 上記(エ)の金額に100分の15を乗じて算出した金額。
(カ)定率減税額 25万円
 上記(1)カに同じ。
(キ)源泉徴収税額 10万3070円
 上記(1)キに同じ。
(ク)納付すべき税額 410万2500円
 上記(オ)の金額から上記(カ)及び(キ)の金額を控除した金額(100円未満切捨て)。
イ 過少申告加算税について
(ア)通常分
a 加算税の対象となる税額 169万5000円
b 加算税の基礎となる税額 169万円
c 上記bの10% 16万9000円
(イ)加重分
a 累積増差税額 292万5000円
b 期限内申告税額 128万0570円
(a)確定申告分 117万7500円
(b)源泉徴収税額 10万3070円
c a-b 164万4430円
d 加算税の基礎となる税額 164万円
e 上記dの5% 8万2000円
(ウ)合計 25万1000円
3 関連法令
 関連法令は別紙関連法令記載のとおりである。
4 争点
(1)本件各土地の譲渡に係る譲渡所得につき、本件特例が適用されるか否か。
(2)本件道路拡幅用地の購入費用が、本件各土地の譲渡に係る譲渡所得の計算上、譲渡費用として控除の対象となるか否か。
5 争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)について
(被告の主張)
 本件特例を適用するためには、〔1〕債権者に対して債務者の債務の保証をしたこと、〔2〕保証債務履行のために資産を譲渡したこと、〔3〕保証債務を履行したこと、〔4〕履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったことが実体的要件として必要とされるところ、以下の事実に照らせば、Aが自己の所有する本件建物の売却代金として受領した3500万円の中から本件借入金債務を自ら弁済したことが明らかであって、原告がAの保証債務を履行したという客観的事実は一切認められない。したがって、保証債務の履行に伴う求償権の発生自体が認められず、本件特例を適用する余地はない。
ア 本件売買契約書の記載等
 本件売買契約当時、原告が本件各土地を所有しており、Aが本件建物を所有していたことから、本件売買契約書において、売買当事者たる「売主」欄には「(土地)」、「(建物)」とあえて付記した上で、土地について原告が、建物についてAがそれぞれ売主であることが明記されている。そして、本件売買契約書には売買対象たる「物件の表示」欄において、「土地」として本件各土地が、「建物」として本件建物がそれぞれ明記されており、「売買代金及び支払時期」欄において、本件各土地の「土地代金」として5715万3600円と、本件建物の「建物代金」として3500万円とそれぞれ明記されている。
 そうすると、本件売買契約は、Aがその所有する本件建物を代金3500万円をもって売却し、原告がその所有する本件各土地を代金5715万3600円をもって売却するものであったということは、動かすことのできない客観的な事実関係であるというよりほかはない。
イ 客観的な金銭の流れ
 Cは、平成16年9月18日に本件売買契約の手付金450万円を原告及びAに支払い、同年11月25日、更に8800万1942円(本件売買契約の残代金8765万3600円と固定資産税等精算金34万8342円の合計額)をひとまず本件原告口座に入金し、同日のうちに、本件原告口座から本件A口座に3500万円(本件建物の売却代金)が振替送金されている。Aは、同日、B信用金庫に対し、本件A口座において、本件建物の売却代金3500万円をもって、2987万9933円(返済期日が未到来の借入金合計1296万3000円と返済遅延となっていた借入金合計1691万6933円の合計額)をひとまず返済し、その上で、B信用金庫から、繰上げ返済に係る戻し利息合計4750円の入金を受けている。
 このような金銭の流れは、B信用金庫に対して本件借入金債務の弁済をしたのがAであって原告ではないことを如実に示すものである。
ウ Aにおける経理処理
 本件事業年度の総勘定元帳及び決算期末処理においては、Aが、原価3355万4714円である本件建物を3500万円で売却したものであり、144万5286円の利益が出た旨の経理処理がされている。
 また、Aの本件事業年度における総勘定元帳において、平成16年11月25日付けをもって合計2987万9933円の負債が減少した旨記載されているところ、これは本件借入金債務に上記4750円の利息を加えた額である。このように、同日、AがB信用金庫に対して本件借入金債務を自ら弁済した旨の経理処理がされている。
エ 原告の認識
 本件各処分時において、原告には、Aの保証債務を弁済した認識が欠落しており、Aがその所有する本件建物の売却代金をもって自ら本件借入金を弁済したとの認識を持っていた。
オ 本件各土地の売却代金の使途
 原告は、Cから受領した本件各土地の売却代金5715万3600円を原告のB信用金庫からの借入金の返済等に充てており、本件借入金債務の返済に充てた事実は一切認められない。
(原告の主張)
 B信用金庫は、担保権者として本件各土地及び本件建物の売却代金の全部から優先的に弁済を受け得る地位にあるから、AのB信用金庫に対する本件借入金債務は、本件各土地の売却代金及び本件建物の売却代金の全体から支払われたとみるべきであって、これは、本件各土地と本件建物の所有関係や当事者間のやり取り等には関係がない。すると、Aが自力で返済した金額は本件売買契約の代金総額のうち本件建物の代金の割合に相当する金額であり、その余は原告によって支払われたといえる。そして、原告によって支払われた金額、すなわち、本件各土地の代金の割合に相当する金額については、原告がAの保証債務を履行したことになり、これにつきAの廃業により求償権の行使が不能となったのであるから、その金額の分に関しては本件特例の適用が受けられることとなる。
 したがって、B信用金庫への返済額2987万5183円に9250万1942分の5741万6937を乗じた1854万3843円について本件特例の適用が受けられるべきである。
(2)争点(2)について
(被告の主張)
 原告の本件道路拡幅用地の購入費用は、以下のとおり、本件売買契約により生じた譲渡所得についての譲渡費用を構成するものではない。
ア 譲渡所得の金額を計算するに当たって控除されるべき譲渡費用は、取得費に当たるものを除き、個々の資産の譲渡ごとにそれぞれの譲渡を実現するために直接必要な支出を意味するものと解すべきであり、それは個々の資産の譲渡ごとに、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである。
 したがって、譲渡所得の金額を計算する上で、総収入金額から控除した取得費を譲渡費用として更に重複して二重に控除することができないのはもとより、所得税法33条3項1号の所得(以下「短期譲渡所得」という。)に区分される資産と同項2号の所得(以下「長期譲渡所得」という。)に区分される資産を同一年内に譲渡した場合、短期譲渡所得に係る資産の譲渡についての取得費及び譲渡費用は短期譲渡所得の総収入金額から控除される費用に該当するのみで、長期譲渡所得の総収入金額から控除される取得費や譲渡費用に該当することはない。
 そうすると、本件道路拡幅用地の購入費用は、本来的に本件道路拡幅用地の短期譲渡所得においてのみ取得費を構成すべきものであるから、本件道路拡幅用地とは別個の土地である本件各土地の長期譲渡所得において譲渡費用を構成するものではない。
 なお、本件寄付については、所得税法59条1項1号所定のみなし譲渡課税がされないものであるため(租税特別措置法40条1項)、本件道路拡幅用地の購入費用は、結果として取得費と扱われないが、本来的には短期譲渡所得(所得税法33条3項1号)となるべきもので、本件道路拡幅用地という「資産の取得に要した金額」(同法38条1項)として、本件道路拡幅用地に係る短期譲渡所得の取得費を構成するので、資産の譲渡区分が異なる本件各土地の長期譲渡所得の金額の計算には影響を及ぼさない。
イ 本件売買契約には「買主の本物件の取得の目的が本物件の土地に社宅を建築する事にある為、本契約締結後、買主において都市計画法29条、および刈谷市の開発指導要綱に従い開発許可申請手続を行い、所轄官庁からその許可が得られる事」という停止条件が付されているが、本件各土地においては、都市計画法29条による開発許可申請手続やその許可を要するものではなく、現実にそうした手続や許可がないまま、平成17年8月15日、上記社宅が既に建築されて現在に至っているから、原告による本件道路拡幅用地の買受けないし購入費用支払は、上記停止条件と現実的、具体的な関連性がなかったものというべきである。
ウ 本件売買契約に係る重要事項説明書の「17 その他」の9には「本契約は、売主:甲が本物件土地の隣接地(所在地:刈谷市 所有者:乙)の一部分((別添付:分筆予定図朱示部分です。)を隣接地道路拡幅のため所有者:乙より平成16年10月末日までに買受けることを条件して効力が生じるものとし、当該期日までに、売主が買受けることが出来ない場合、効力を失うものと致します。」との本件確認条項が記載され、上記「一部分」とは本件道路拡幅用地を意味すると解されるが、本件確認条項の記載は本件売買契約自体に設けられたものでなく、直ちに本件売買契約の内容となるものではない。
 また、宅地建物取引業法5章1節は、宅地建物取引業者が行う業務を規制し、宅地建物取引業者に対する種々の禁止規定を置いて、様々な義務付けをしているが、これらは宅地建物取引業を行政上の目的から規制した行政的取締規定であり、その義務や禁止内容も行政上のものであるから、同法35条1項所定の重要事項説明書の交付、説明義務の履行によって本件売買契約の私法上の内容が変更きれたというべき根拠はなく、上記記載が本件売買契約の条件となるものではないというべきである。
 したがって、本件道路拡幅用地の購入費用は客観的に見て本件各土地の譲渡を実現するために必要なものではなく、本件各土地の譲渡所得において譲渡費用を構成するものではないというべきである。
エ 仮に本件道路拡幅用地の購入費用が客観的に見て本件各土地の譲渡を実現するために必要なものであったとしても、そうした費用のうち取得費に当たるものを除いたものが譲渡費用となり得るにすぎないのであって、本件道路拡幅用地の購入費用が直ちに譲渡費用に当たるとはいえない。
(原告の主張)
ア 所得税法33条3項にいう「資産の取得費」とは当該資産を購入する際に要した費用をいうのであり、「資産の譲渡に要した費用」とは当該資産を売却する際に要した費用をいう。本件についてみるに、原告は、本件各土地を売却するに当たって本件道路拡幅用地を買受けることが条件とされていたためにこれを購入する必要があったのであるから、その購入費用は、本件各土地を「売却する際」に要した譲渡費用に当たる。
イ(ア)これに対し、被告は、本件道路拡幅用地の購入費用が本来的に本件道路拡幅用地の譲渡に係る短期譲渡所得において取得費を構成すべきものであると主張する。
 しかし、そのことと本件道路拡幅用地の購入費用が本件各土地の譲渡所得において譲渡費用を構成するか否かという問題は論理的に全く別個のものである。そもそも本件寄付は、租税特別措置法40条1項によってその短期譲渡所得自体がなかったものとみなされるのであるから、法律上無視すべきであり、これをことさら取上げて、本件道路拡幅用地の譲渡に係る短期譲渡所得における取得費に該当するというのは、法の規定から離れた机上の理論にすぎない。
(イ)また、被告は、原告の主張によれば、短期譲渡所得の計算上は取得費として控除される費用を、長期譲渡所得の計算上は譲渡費用として控除できることになり二重控除であると主張する。しかし、上記(ア)のとおり、本件寄付は、法の規定によって課税の関係ではなかったものとみなされるので、法律上、本件道路拡幅用地の購入費用が短期譲渡所得に係る取得費として控除されることはなく、実際には被告が指摘する二重控除は生じない。
(ウ)被告は、本件道路拡幅用地の購入費用が客観的に見て本件各土地の譲渡を実現するために必要なものではなかったと主張するが、本件売買契約において原告が本件道路拡幅用地を購入することが停止条件であったことは、本件確認条項からも明らかである。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)について
(1)前記前提事実に証拠(乙4、6、7、11、12の1、2、乙13の1、2、乙16、19、24の1~3)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
ア 本件売買契約書には、「売買代金総額 92,153,600円」との記載に続き、「内訳」として「土地代金 57,153,600円」、「建物代金 35,000,000円」との記載がある。また、本件売買契約書の売主欄には、「(土地)」との記載の後に原告個人の署名押印が、「(建物)」との記載の後にA代表取締役の記名押印があり、Cにあてた3通の領収証にもA代表取締役の記名押印と原告個人の署名押印がある。
イ 原告は、平成16年11月25日、本件売買契約の仲介料等として、本件原告口座から本件売買契約の媒介業者である有限会社Dほか3社に合計569万1465円を振り込んで支払った。
 また、原告は、同日、本件原告口座から3391万円を原告のB信用金庫刈谷北店の普通預金口座(口座番号 )に振替入金し、同日、同口座から原告のB信用金庫からの借入金合計3390万7525円を返済した。
ウ Aの本件事業年度に係る総勘定元帳には、Aが平成16年11月25日に固定資産を売却してB信用金庫の普通預金口座に3500万円の入金を受け、原価3355万4714円を差し引くと144万5286円の固定資産売却益があった旨の記載があり、本件事業年度の損益計算書にも固定資産売却益として同額が計上されている。
また、Aの本件事業年度に係る総勘定元帳には、同日、B信用金庫の普通預金口座から、890万円の短期借入金を返済(完済)し、また、合計2097万9933円の長期借入金を返済した旨の記載がある。
(2)所得税法64条2項の規定によれば、本件特例の適用を受けるためには、保証人が保証債務を履行したことが要件とされていることが明らかである。
 前記前提事実及び上記(1)の事実によれば、AのB信用金庫に対する本件借入金債務は、Aがその所有する本件建物を売却して得た代金によって自ら返済したものと認められ、原告が保証債務を履行したものとは認められないから、本件特例を適用するための要件を欠くものといわなければならない。
(3)原告は、AのB信用金庫に対する本件借入金債務は本件各土地の売却代金及び本件建物の売却代金の全体から弁済されたとみるべきであり、本件売買契約の代金総額のうち本件各土地の代金の割合に相当する金額(1854万3843円)については、原告がAの保証債務を履行したことになると主張する。
 しかしながら、前記(1)ア、ウで認定した本件売買契約書の記載や本件建物売却及び借入金に関するAの経理処理等に照らすと、本件売買契約は、原告が本件各土地を、Aが本件建物をそれぞれ売却することを内容とするものであることが明らかであり、Aは、本件借入金債務を本件建物の売却代金3500万円の中から返済したものと認められる。また、前記(1)イのとおり、原告は、本件各土地の売却代金5715万3600円の大部分を原告自身のB信用金庫からの借入金の返済等に充てており、本件各土地の売却代金を本件借入金債務の返済に充てたものと認めるべき証拠は全くない。そして、原告は、Aの代表者でもあるところ、平成17年12月14日、刈谷税務署財務事務官に対し、本件借入金債務は本件建物の所有者であるAが本件建物の売却代金から返済したと思っている旨供述しており(乙25)、同供述当時、原告において、本件各土地の売却代金の一部を本件借入金債務の返済に充てたという認識を有していなかったことが明らかである。
 なお、原告は、B信用金庫が本件建物に加えて本件土地1、2についても抵当権を有しており、本件土地1、2と本件建物の売却代金全部から優先的に弁済を受け得る地位にあったと主張するが、本件においては、結局、Aが本件建物を売却し、その売却代金から本件借入金債務を返済したものと認められるから、B信用金庫が上記のような地位にあることから直ちに原告が保証債務の履行をしたものということはできない。
2 争点(2)について
(1)譲渡所得の金額は、資産の譲渡による所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった「資産の取得費」及びその「資産の譲渡に要した費用」の額の合計額を控除し、その残額(譲渡益)から譲渡所得の特別控除額を控除して計算される(所得税法33条3項)。なお、「資産の取得費」は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額をいう(同法38条1項)。
(2)原告が支出した本件道路拡幅用地の購入費用は、本件道路拡幅用地自体の取得に要した費用であるから、本来、本件道路拡幅用地の短期譲渡所得(所得税法33条3項1号)についての取得費を構成すべきところ、原告は本件道路拡幅用地を刈谷市に寄付したため、みなし短期譲渡所得課税の対象となるべき贈与がなかったものとされ(租税特別措置法40条1項)、短期譲渡所得課税そのものがされなかったために、取得費としての控除が行われなかったものである。
(3)本件売買契約に係る重要事項説明書に記載された本件確認条項に照らせば、原告が本件道路拡幅用地を取得することが本件売買契約の停止条件とされていたものと認められ(原告とCが売買の条件としたために重要事項説明書に記載されたものと認めるのが相当である。)、本件道路拡幅用地の購入費用は、本件各土地の譲渡に当たって支出された費用と認められる。また、前記前提事実によれば、原告が上記停止条件を成就させるために締結した本件道路拡幅用地の売買契約には、本件道路拡幅用地を原告が購入後刈谷市へ道路用地として寄付することが「絶対条件」とされ、原告は、これに従って、本件道路拡幅用地を購入後、刈谷市へ寄付したため、原告には、結局、本件道路拡幅用地の購入費用の支出という結果のみが残ったことが認められる。
 ところで、資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法33条3項にいう「資産の譲渡に要した費用」に当たるかどうかは,現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきである(最高裁平成15年(行ヒ)第217号同18年4月20日第一小法廷判決・判例タイムズ1212号81頁参照)。上記のとおり、本件道路拡幅用地を取得することが本件売買契約の停止条件とされていたことなどにかんがみると、本件道路拡幅用地の購入費用は、客観的に見て本件各土地の譲渡を実現するために必要であったものと認められ、本件各土地の譲渡費用に当たると認めるのが相当である。なお、本件道路拡幅用地の購入費用は、本件各土地の改良費に当たるものと解することはできないから、これを本件各土地の取得費に当たるということはできない。また、本件道路拡幅用地の購入費用は、本件道路拡幅用地につて譲渡所得の計算上取得費として控除されるべきものであるが、そのことをもって、本件各土地の譲渡に要した費用に当たらないとすることはできない(仮に本件道路拡幅用地について譲渡所得課税がされていれば、その課税分も含めて本件各土地の譲渡に要した費用に当たると解される。)。
(3)そうすると、本件道路拡幅用地の購入費用50万円は、本件各土地の譲渡所得を算出するに当たり、控除すべきものであるから、原告の納付すべき税額は、次のとおりとなる。 
ア 総所得金額 65万5722円
イ 分離長期譲渡所得金額 4985万4449円
ウ 所得から差し引かれる金額 226万1800円
エ 課税される所得金額 4824万8000円
オ 算出税額 723万7200円
カ 定率減税額 25万円
キ 源泉徴収税額 10万3070円
ク 納付すべき税額 688万4100円
ケ 過少申告加算税の額
(ア)通常分
a 加算税の対象となる税額 447万6600円
b 加算税の基礎となる税額 447万円
c 上記bの10% 44万7000円
(イ)加重分
a 累積増差税額 570万6600円
b 期限内申告税額 128万0570円
c a-b 442万6030円
d 加算税の基礎となる税額 442万円
e 上記dの5% 22万1000円
(ウ)合計 66万8000円
3 以上によれば、原告の請求は、処分行政庁が原告に対し平成18年3月6日付けでした平成16年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額668万4100円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち66万8000円を超える部分の取消しを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官 松並重雄 裁判官 前田郁勝 裁判官 廣瀬達人

(別紙)物件目録
1 所在 愛知県刈谷市
地番
地目 宅地
地積 710.73平方メートル
2 所在 愛知県刈谷市
地番
地目 宅地
地積 991.74平方メートル
3 所在 愛知県刈谷市
地番
地目 公衆用道路
地積 73平方メートル
4 所在 愛知県刈谷市
地番
地目 公衆用道路
地積 18平方メートル
5 所在 愛知県刈谷市
家屋番号
種類 工場
構造 鉄骨造スレート、亜鉛メッキ鋼板葺2階建
床面積 1階 415.50平方メートル
2階 79.75平方メートル
6 所在 愛知県刈谷市
地番
地目 畑
地積 12平方メートル
(別紙)課税等経緯一覧
(別紙)関連法令
1 所得税法
33条1項 譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
 2項(略)
 3項 譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
1 資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後5年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
2 資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4項 前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、50万円(譲渡益が50万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
38条1項 譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。
59条1項 次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす。
1 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
2 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
64条1項 その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除く。以下この項において同じ。)の計算の基礎となる収入金額若しくは総収入金額(不動産所得又は山林所得を生ずべき事業から生じたものを除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部を回収することができないこととなった場合又は政令で定める事由により当該収入金額若しくは総収入金額の全部若しくは一部を返還すべきこととなった場合には、政令で定めるところにより、当該各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなった金額又は返還すべきこととなった金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかったものとみなす。
2項 保証債務を履行するため資産(第33条第2項第1号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)の譲渡(同条第1項に規定する政令で定める行為を含む。)があった場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなったときは、その行使することができないこととなった金額(不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を除く。)を前項に規定する回収することができないこととなった金額とみなして、同項の規定を適用する。
2 租税特別措置法
31条の4第1項 個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第38条及び第61条の規定にかかわらず、当該収入金額の100分の5に相当する金額とする。ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。
1 その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額
2 その建物等の取得に要した金額と設備費及び改良費の額との合計額につき所得税法第38条第2項の規定を適用した場合に同項の規定により取得費とされる金額
40条1項 国又は地方公共団体に対し財産の贈与又は遺贈があった場合には、所得税法第59条第1項第1号の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかったものとみなす。民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設立された法人その他の公益を目的とする事業を営む法人に対する財産の贈与又は遺贈(当該法人を設立するためにする財産の提供を含む。以下この条において同じ。)で当該贈与又は遺贈が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについても、また同様とする。

平成19年(行ウ)第98号 所得税更正処分取消等請求事件

       更正決定

原告 甲
被告 国
 上記事件について、当裁判所が平成20年9月29日に言い渡した判決に明白な誤りがあるから、当裁判所は、職権により、次のとおり決定する。

       主   文

1 上記判決の主文第1項中「納付すべき税額668万4100円」とあるのを「納付すべき税額688万4100円」と更正する。
2 上記判決19頁12行目から13行目にかけて「納付すべき税額668万4100円」とあるのを「納付すべき税額688万4100円」と更正する。
平成20年9月29日
名古屋地方裁判所民事第9部
裁判長裁判官 松並重雄 裁判官 前田郁勝 裁判官 廣瀬達人


 

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