令和3年2月4回目紹介判例
(令和3年2月18日新着判例より)
話題の判決
テレビ、新聞記事などで報道され、注目された最新判決を「話題の判決」としてご紹介します。
【文献番号】 |
25568621 |
・裁判年月日 |
令和 3年 1月21日 |
・文献種別 |
判決/東京高等裁判所(控訴審) |
・事件番号 |
令和2年(ネ)第2298号 |
・事件名 |
損害賠償請求控訴事件 |
・概要 |
故Gは、被控訴人会社の従業員であり、平成23年当時、被控訴人会社のH支社に勤務していたところ、同年8月6日に脳幹部出血である本件脳出血を発症して同月7日に死亡した。控訴人Aは故Gの妻、控訴人B及び同Cはその間の子であり、被控訴人E、同D及び同Fは、故Gの死亡当時、いずれも被控訴人会社の取締役であった。本件は、控訴人らが、故Gが本件脳出血を発症して死亡したのは被控訴人会社から長時間にわたる時間外労働を強いられたことによるものであって、被控訴人会社には債務不履行(安全配慮義務違反)が、被控訴人E、同D及び同Fの悪意又は重過失による任務懈怠がそれぞれあったと主張して、被控訴人会社に対しては債務不履行を理由とする損害賠償請求権に基づき、被控訴人E、同D及び同Fに対しては会社法429条1項に基づき、総損害額合計7695万7326円から控訴人らの自認する損益相殺をした後の残額(控訴人Aにつき2634万9030円、控訴人B及び同Cにつき各1923万9331円)及びこれらに対する遅延損害金の連帯支払を求め、原審は、故Gの死亡は被控訴人会社での長時間の時間外労働によるものであったと認定して被控訴人会社の債務不履行責任を肯定する一方、その余の被控訴人らについては、H支社の工場長であり、故Gの直属の上司でもあった被控訴人Fにつき軽過失があったにとどまり、いずれも悪意又は重過失があったとは認められないと判断して会社法429条1項所定の取締役の責任を否定した上、弁護士費用以外の総損害額について、故Gの身体的素因等を理由とする過失相殺の類推適用により7割を減じた額を控訴人らが法定相続分割合により相続し、損益相殺(遺族基礎年金及び遺族厚生年金の合計1120万7066円)をした後の残額に弁護士費用を加算した額(控訴人Aにつき495万円、控訴人B及び同Cにつき各509万9201円)及びこれらに対する遅延損害金の支払を求める限度で控訴人らの被控訴人会社に対する請求を一部認容し、控訴人らのその余の請求をいずれも棄却したところ、これを不服とする控訴人らが本件控訴をした事案で、原判決中、被控訴人会社及び同Fに関する部分は不当であるとし、原判決の認容額を増額した内容で変更し、原判決中、控訴人らの被控訴人E及び同Dに対する請求をいずれも棄却した部分は正当であり、控訴人らのその余の控訴を棄却した事例。 |
【文献番号】 |
25568129 |
・裁判年月日 |
令和 2年12月16日 |
・文献種別 |
判決/名古屋高等裁判所金沢支部(控訴審) |
・事件番号 |
令和2年(ネ)第39号 |
・事件名 |
損害賠償等請求控訴事件 |
・概要 |
被控訴人法人が運営する病院で医療保護入院中に身体的拘束を受けた亡Dが死亡したことについて、亡Dの相続人である控訴人らが、被控訴人に対し、被控訴人病院に勤務する医師らが、違法に身体的拘束をしたうえ、それによる肺動脈血栓塞栓症の発症を回避するための注意義務に違反した過失により亡Dが死亡したとして、使用者責任に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、原審が控訴人らの請求を棄却したところ、控訴人らが控訴した事案で、精神科病院の入院患者に対する行動制限にあたっては、精神保健指定医の裁量に委ねられているとしても、身体的拘束は当該患者の生命の保護などに重点を置いたものであるから、この選択にあたっては特に慎重な配慮を要するが、本件担当医師の判断においては早きに失し、精神保健指定医に認められた裁量を逸脱し、違法であるというべきであり、亡Dは、本件身体的拘束により急性肺血栓塞栓症を発症して死亡したものと認められるから、被控訴人は控訴人らに対して使用者責任に基づく損害賠償義務を負うものというべきであるところ、これと異なる原判決は失当であるとして、原判決を変更した事例。 |
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