平成30年7月1回目紹介判例
(平成30年6月29日新着判例より)
話題の判決
テレビ、新聞記事などで報道され、注目された最新判決を「話題の判決」としてご紹介します。
【文献番号】 |
25560498 |
・裁判年月日 |
平成30年 6月 8日 |
・文献種別 |
判決/長崎地方裁判所(第一審) |
・事件番号 |
平成29年(ワ)第511号 |
・事件名 |
請求異議事件 |
・概要 |
原告(長崎県弁護士会所属の弁護士)が、解決金の支払義務を定めた別件訴訟の和解調書に基づく、被告(原告に雇用された元従業員:法律事務職員)に対し、別紙差押債権目録記載1から16までの債権に対する強制執行の不許を求めた事案において、本件解決金は全額弁済されいるか否かについては、本件全証拠によっても、本件解決金の全部又は一部が退職所得の性質を有していたと認めることはできず、この点に関する原告の主張は、採用することができないとし、また、本件和解調書に基づく強制執行が信義則違反については、強制執行が信義則違反又は権利濫用に当たるということはできないとし、原告の請求を棄却した事例。 |
【文献番号】 |
25560354 |
・裁判年月日 |
平成30年 5月10日 |
・文献種別 |
判決/さいたま地方裁判所(第一審) |
・事件番号 |
平成28年(わ)第1038号等 |
・事件名 |
覚せい剤取締法違反、建造物等以外放火、非現住建造物等放火未遂、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反、窃盗被告事件 |
・概要 |
暴力団関係者との交友関係のある被告人の覚せい剤取締法違反、窃盗の罪においては、被告人が所持していた覚せい剤は6グラム以上と多量である上、被告人は18歳頃から断続的に覚せい剤を使用してきたものであり、覚せい剤に対する常習性、親和性は高いとし、また、窃盗の点をみると,被告人は第三者に指示されるがままに自動車を窃取したものであり,被害額は110万円以上と高額であり、被害結果は重大であるなどとし、懲役2年に処したが、建造物等以外放火、非現住建造物等放火未遂及び火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反の各罪においては、検察官が証拠とした本件撮影(〔1〕平成27年10月4日から平成28年5月19日までの間、被告人方近隣の私人管理場所の中にビデオカメラを設置し、データを保存する外付けハードディスクの交換時を除いて24時間連続で撮影を行ったこと、〔2〕撮影範囲は、主に被告人方前の公道及び被告人方玄関であったが,被告人方玄関ドアが開いた際には、ドアの内部の様子が映り込んでおり、ドアの内部の様子が撮影されていた時間が連続約25分間に及ぶこともあったこと、〔3〕警察官は,外付けハードディスクを交換した後,人や車の動きのある部分をパソコンにダウンロードして保存しており,この際明らかに無関係な郵便配達人等の映像は除いていたが,事件と関係のない人や車等の映像でも残されていたものがあった)が、類型的に強制処分に当たるとまではいえないものの、少なくとも平成28年の初め頃以降はその撮影の必要性が相当程度低下していたことは明らかで、それにもかかわらず長期間にわたって撮影を継続したこと自体不適切であった上、しかも本件撮影方法は他の類似事案と比べるとプライバシー侵害の程度が高いものであったと評価できることを考慮すれば、本件放火事件当時の撮影は、任意捜査として相当と認められる範囲を逸脱した違法なものであったと認められるとし、被告人に無罪を言い渡した事例。 |
【文献番号】 |
25560510 |
・裁判年月日 |
平成30年 4月25日 |
・文献種別 |
判決/東京高等裁判所(控訴審) |
・事件番号 |
平成29年(行コ)第334号等 |
・事件名 |
法人税更正処分等取消控訴、同附帯控訴事件 |
・概要 |
控訴人(兼附帯被控訴人・1審被告。国)は、被控訴人(兼附帯控訴人・1審原告)を死亡退職した元代表取締役の亡eへの退職慰労金(本件役員退職給与)の支給額4億2000万円を損金の額に算入して本件事業年度分の法人税の確定申告をしたが、これに対し、三条税務署長(処分行政庁)は、本件役員退職給与の額のうち不相当に高額の部分である2億0875万2000円については損金の額に算入されないことを理由として、被控訴人に対して、所得金額2億6683万3941円、納付すべき税額7814万4200円とする更正処分及び過少申告加算税822万円の賦課決定処分をしたため、被控訴人が、控訴人に対して、本件各処分の取消しを求めたところ、原審は、処分行政庁の調査に基づく本件平均功績倍率の3.26にその半数を加えた4.89に亡eの最終月額報酬額240万円及び勤続年数27年をそれぞれ乗じて計算される金額に相当する3億1687万2000円までの部分は亡eに対する退職給与として相当であると認められる金額を超えるものではなく,本件役員退職給与の額のうち「不相当に高額な部分の金額」は同額を4億2000万円から控除した残額の1億0312万8000円であることを前提として計算すべきと判断して、本件更正処分のうち所得金額1億6704万1941円及び納付すべき税額4820万6600円を超える部分並びに本件賦課決定処分のうち過少申告加算税の額372万9000円を超える部分をいずれも取り消したため、控訴人は、原審の本件各処分について一部取消しを認めた判断を不服として控訴し、被控訴人は、請求が一部認められなかった部分を不服として附帯控訴した事案において、本件更正処分のうち所得金額1億6704万1941円及び納付すべき税額4820万6600円を超える部分並びに本件賦課決定処分のうち過少申告加算税の額372万9000円を超える部分は、いずれも違法な処分として取消し、被控訴人のその余の部分はいずれも適法なものというべきであるとして、棄却した事例。 |
【文献番号】 |
25560511 |
・裁判年月日 |
平成30年 3月14日 |
・文献種別 |
判決/東京高等裁判所(控訴審) |
・事件番号 |
平成27年(う)第2179号 |
・事件名 |
各業務上過失致死被告事件 |
・概要 |
本件事故当時、被告人P1(エレベーター等保守管理会社の代表取締役)及び被告人P2(同社専務取締役)、被告人P3(同社メンテナンス部長)らをして、当該エレベーターの保守点検を実施させる体制を採るべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、そのような体制を採らず、エレベーター等保守管理会社がP5の管理を委託された財団法人からP5に設置されたエレベーターの保守点検業務を受託した際、その構造を把握できていないと思われる機種であるにもかかわらず、被告人P3らをして上記調査等を行わせず、同社保守点検員にその保守点検方法等を十分に理解させないまま、その保守点検を開始・実施させ、また、被告人P3は、エレベーターの保守点検を点検員に実施させるに当たり、その保守点検方法等につき十分な調査を行い、その調査結果に基づいて保守点検項目等を策定するとともに、点検員にその保守点検方法等に関して必要な情報を与え、それらを十分理解させた上、その保守点検を実施させるべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、上記調査等を行わず、約2か月後の平成18年5月25日に、5号機のかごが停止してかご及び乗降口が開いた際、ライニングの摩耗の進行によりプランジャーストロークが限界値に達していたため、かごの静止状態を保持することができず、かご及び乗降口の各扉が開いたままかごが上昇し、被害者をかごの床面と乗降口の外枠に挟ませて死亡させたとする事案の控訴審において、原判決の判断は、遅くとも平成18年5月25日時点で本件ライニングに異常摩耗が発生、進行していて、その日の定期点検で、点検員がそのことに気付くなどして本件事故を回避することができたことを前提として、被告人らの過失を認定しているものであるが、本件ライニングの異常摩耗の発生時期を推認させるとした事実の認定やその推認力の評価を誤るなどした結果、上記時点までに本件ライニングの異常摩耗が発生していたことを認めるに足りる証拠がないのに、その事実を認めて被告人らの過失を認定したものであって,経験則等に照らして不合理であり,是認することはできないとし、被告人らに本件公訴事実の業務上過失致死罪は成立しないと判断し、原判決を破棄し、被告人らに無罪の言渡しをした事例。 |
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