最新判例
 
平成30年2月3回目紹介判例
(平成30年2月15日新着判例より)


話題の判決
テレビ、新聞記事などで報道され、注目された最新判決を「話題の判決」としてご紹介します。


【文献番号】 25549194
・裁判年月日 平成29年12月20日
・文献種別 決定/大阪高等裁判所(抗告審)
・事件番号 平成27年(く)第411号
・事件名 再審請求棄却決定に対する即時抗告申立事件
・概要 申立人(再審請求人)が平成17年11月29日に大津地方裁判所で殺人被告事件で懲役12年に処せられた確定判決(申立人に対する確定判決が認定した犯罪事実の概要は「被告人は、医療法人社団A会B病院に看護助手として勤務していたものであるが、同病院C階D号室において、慢性呼吸不全等による重篤な症状で入院加療中であった被害者(当時72歳)に対し、そののど元に装着された人工呼吸器の呼吸回路中にあるL字管からこれに接続するフレックスチューブを引き抜いて酸素供給を遮断し、被害者を呼吸停止の状態に陥らせ、同病室で、被害者を急性低酸素状態により死亡させて殺害した」というもの)に対する再審請求をし、原決定は、刑事訴訟法435条6号に規定する証拠には該当しないとして請求を棄却したため、申立人が即時抗告した事案において、弁護人提出の新証拠により、被害者の死因が酸素供給途絶にあるとする確定判決が依拠したd鑑定等の証明力は減殺され、被害者が自然死した合理的な疑いが生じたというべきであり、原決定は、d鑑定等の証明力の程度に関する判断を誤り、その結果、新証拠等の証明力の評価を誤って事実を誤認したものといわざるを得ないとし、弁護人が原審に提出した新証拠のうち死因(致死的不整脈)に関する証拠に明白性を認めなかった原決定の判断を是認することはできず、当審に提出された証拠も併せて検討すると、申立人が本件の犯人であると認めるには合理的な疑いが残っているとして、原決定を取消し、本件について再審開始を決定した事例。

【文献番号】 25548884
・裁判年月日 平成29年11月29日
・文献種別 判決/神戸地方裁判所(第一審)
・事件番号 平成28年(ワ)第1653号
・事件名 損害賠償請求事件
・概要 原告D(原告Aの母)は、夫(婚姻関係にある配偶者)から継続的に暴力を振るわれ、離婚の手続を取ることができないまま別居し、夫との婚姻継続中、原告Aの生物学上の父と交際し、原告Aを懐胎し出産し、原告Dは、夫に原告Aの存在を知られることを恐れ、その出生届を提出することができず、原告Aの実父が提出した原告Aの出生届は、夫の嫡出推定が及ぶことを理由に不受理とされ、原告D及び原告Aは、妻や子に夫に対する嫡出否認の訴えの提起が法律上認められていないことから、結果として、原告Aは無戸籍となり、原告B(原告Aの子)及び原告C(原告Aの子)は、原告B及び原告Cは、母である原告Aに戸籍がないため、その戸籍に入ることができず、原告Aと同様に無戸籍となったことにつき、民法774条~民法776条(本件各規定)は、父(夫)にのみ嫡出否認の訴えの提訴権を認めることによって、合理的な理由なく、父と子及び夫と妻との間で差別的な取扱いをしており、社会的身分による差別(憲法14条1項)に該当し、同項及び憲法24条2項に違反していることが明らかであり、国会(国会議員)は本件各規定の改正を怠っており、その立法不作為は、国家賠償法上違法であると主張した原告らが、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、精神的損害に対する慰謝料及び弁護士費用として、金員の支払を求めた事案において、本件各規定についての憲法適合性に関する原告らの主張はいずれも理由がないとし、原告らの請求を棄却した事例。

【文献番号】 25449223
・裁判年月日 平成29年12月 8日
・文献種別 判決/最高裁判所第三小法廷(上告審)
・事件番号 平成27年(あ)第120号
・事件名 窃盗,強盗殺人,住居侵入被告事件
・著名事件名 大阪ドラム缶遺体事件
・概要 被告人が、被害者夫婦方敷地に金品奪取目的で赴き、同夫婦を殺害し、金品を奪取し、強盗殺人の後に、被害者らの死体をドラム缶内に隠匿して放置し続けたとして、被告人に対し、第1審判決、控訴審判決とともに、死刑を言い渡したため、被告人が上告した事案において、量刑判断の中心となる強盗殺人の犯行は、被告人が、以前関わった居宅等工事の関係で生活状況を把握していた高齢の被害者夫婦の財産を狙って、200万円を超える金品を奪い、その機会に被害者両名の頭部をいずれも重量のある鈍器で殴打するなどし、短時間のうちに絶命させたというもので、その殺害態様は冷酷かつ悪質で、強固な殺意が認められる上、犯行の利欲性も高く、何らの落ち度も認められない2名の生命を奪ったという結果は重大であるなどとして、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、上告を棄却した事例。


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